再雇用制度:高年齢者雇用の最適解とは?
はじめに:高齢化社会における雇用戦略としての再雇用制度
日本は急速に高齢化が進んでおり、労働力人口の確保が多くの企業にとって喫緊の課題です。こうした中で注目されているのが「再雇用制度」です。本記事では、高年齢者雇用安定法に基づく再雇用制度の基本から、中小企業が実務で導入・運用するための実践的なポイントまでを、わかりやすく解説します。
再雇用制度とは何か?
再雇用制度の基本的な仕組み
再雇用制度とは、定年退職を迎えた従業員を一度退職させた上で、再び新たな条件で雇用する制度です。これは、高年齢者雇用安定法に基づき、65歳未満に定年制度を設けている企業に対し、講じるべき「高年齢者雇用確保措置」の一環として位置付けられています。
高年齢者雇用確保措置の3つの選択肢
2006年の法改正により、次の3つのうちいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
- ① 定年の引上げ
- ② 継続雇用制度の導入(再雇用制度・勤務延長制度)
- ③ 定年制度の廃止
その中で、再雇用制度はコスト面、柔軟性、業務量の調整といった観点から中小企業にとって導入しやすい選択肢となっています。
再雇用制度と勤務延長制度の違い
再雇用制度=一度退職+再契約
再雇用制度は、いったん定年で退職扱いとし、その後、再契約の形で雇い直す制度です。そのため、定年時点で退職金の支払いが行われるのが一般的です。
勤務延長制度=雇用継続型
一方、勤務延長制度は退職を挟まず、雇用契約をそのまま延長する形式です。労働条件や役職を変更しづらい側面がありますが、一定の継続性が維持されるという利点もあります。
再雇用制度の導入が求められる背景
法改正と団塊世代の退職
再雇用制度の義務化は、2007年問題(団塊世代の大量退職)と、年金(定額部分)の受給開始年齢の引上げが背景にあります。これにより、60歳以降も働き続ける環境整備が必要となりました。
年金支給年齢の引上げと空白期間の解消
厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられる中、60〜65歳の「無収入リスク期間」を企業が再雇用制度で支える形になっています。
再雇用制度を導入するメリット
即戦力人材の確保
再雇用される従業員は、企業内の業務や文化を熟知しており、教育コストが不要です。これにより、安定的な戦力の確保が可能となります。
人件費の最適化
再雇用時は新たな労働条件(短時間勤務や職務範囲の限定など)で契約できるため、定年前より人件費を抑えた雇用が可能です。
地域・業界への社会的責任の履行
高年齢者の雇用は、社会貢献にもつながります。地元の雇用を守る姿勢は企業イメージの向上にもつながります。
再雇用制度導入の際に必要な準備
就業規則の整備
再雇用のルールを明文化した「再雇用制度規程」や「高年齢者就業規程」などの作成が不可欠です。
労使協定の締結
再雇用の対象となる基準を定めるためには、労使協定が必要です。例えば「評価が一定以上の者」など、客観的基準の設定が求められます。
労働条件通知書の再交付
再雇用後は新たな契約となるため、労働条件通知書の交付を改めて行う必要があります。
再雇用制度の留意点とリスク管理
雇用条件の格差への配慮
定年前との処遇差に不満が出やすいため、説明責任を果たすことが重要です。特に賃金水準の妥当性は丁寧に説明しましょう。
職種・業務の限定可能性と柔軟な対応
法的には、希望者全員を再雇用する義務はありますが、職種や労働条件の変更は認められています。ただし、「嫌がらせ」と受け取られないよう配慮が必要です。
社会保険や労働保険の手続き
再雇用後も労働時間に応じて健康保険や厚生年金保険の加入義務が発生するため、保険手続きの見直しも忘れずに行いましょう。
その他の活用形態と最近の動向
出産・育児・介護からの復帰者への「再雇用」
最近では、高年齢者に限らず、出産・育児・介護などで退職した社員を一定期間後に再雇用する制度も広義の「再雇用制度」と呼ばれることがあります。多様な人材活用が求められる今、柔軟な制度設計が競争力の鍵となります。
定年廃止企業の増加とその波及効果
一部大企業では定年自体を廃止する流れもあり、働き方改革の一環として、年齢によらず働ける制度が注目されています。
まとめ:高年齢者と共に歩む企業経営へ
再雇用制度は、労働力不足への対応策であると同時に、熟練人材を活かす経営戦略でもあります。法令遵守はもちろんのこと、自社の実情に合った柔軟な制度設計と、丁寧な運用が成功のカギとなります。
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[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
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