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2025-05-16

CHO(最高人事責任者)とは?

はじめに:経営における「人」の重要性が増す時代へ

近年、企業における競争優位の源泉は「ヒト・モノ・カネ」のうち、特に“ヒト”の比重が高まっています。働き方改革、ダイバーシティ経営、人材流動化といった時代の変化に適応するには、人的資源管理の在り方を根本から見直す必要があります。

そこで注目されているのが「CHO(Chief Human Officer/最高人事責任者)」という役割です。この記事では、中小企業や個人事業主でも導入可能なCHOの概念や役割、導入のメリットについて詳しく解説します。


CHOとは何か?

CHOの基本定義

CHO(Chief Human Officer)とは、「最高人事責任者」を意味する役職であり、企業における人的資源(Human Resources)の戦略的マネジメントを担うポジションです。CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)などと同様、企業戦略の中核を担う役割として注目されています。

CHOの背景と発展

アメリカでは、取締役会が監督を担い、実務は執行役が行うというガバナンス体制が一般的です。そのためCHOも、実際の人事戦略の立案・実行を担う執行役として発展しました。

日本では、従来「人事部長」や「人事担当役員」として表現されてきた職務ですが、近年では「執行責任の明確化」を背景に、CHOという名称を採用する企業が増加しています。


CHOの具体的な役割とは?

経営戦略と人事戦略の統合

CHOは単に採用・教育・評価などの人事業務を管理するのではなく、経営戦略と人材戦略を統合する役割を担います。中長期的な成長を見据えた「人材ポートフォリオ」の最適化や、「働きがい」や「エンゲージメント向上施策」の推進もその一部です。

経営者と従業員の橋渡し

従業員の声を吸い上げ、経営方針に反映させる「組織のパルスチェック」や、労務トラブルの未然防止策など、CHOは“組織のコンディション”を常に測るセンサーの役割も果たします。

人事部長との違い

区分人事部長CHO
責任範囲実務中心(採用・労務・給与等)戦略中心(経営と人事の橋渡し)
立場部門長執行役員レベル
経営関与度限定的経営陣の一員として人材戦略を主導
意思決定権業務レベルでの裁量経営意思決定への参画

なぜ今、中小企業にもCHOが必要なのか?

1. 人材確保が経営課題に

少子高齢化による労働人口の減少により、人材確保は企業存続の鍵を握る課題となりました。CHOは採用戦略やブランディング強化、人材定着に対する全社的な取り組みを主導します。

2. 働き方の多様化

リモートワーク、副業、フレックスタイム制など、働き方の多様化に対して柔軟に対応する制度設計が必要です。CHOはこれらの制度設計と浸透に責任を持ちます。

3. 組織文化と心理的安全性の構築

離職率の低下、生産性の向上には「心理的安全性」や「共感経営」が不可欠です。CHOは、社内コミュニケーションのデザインや、エンゲージメント向上のための施策を設計・推進します。


CHOの導入方法とポイント

導入手順

  1. 経営方針と人材課題の整理
  2. CHOの職責と権限の明確化
  3. CHO候補者の選定(内部登用 or 外部招聘)
  4. 制度設計(職務記述書、評価指標など)
  5. 社内への周知と導入支援

CHOに求められる資質

  • 経営視点を持ちつつ、人に寄り添えるバランス感覚
  • 組織開発・労務・評価制度に関する広範な知識
  • 社内外との高いコミュニケーション能力
  • データに基づく意思決定(People Analytics)

CHO導入事例に見る成功の鍵

事例1:あるIT企業のCHO制度導入

中小IT企業A社は、人事部長をCHOとして再任し、経営会議への参加を義務化。離職率が30%→12%に低下、従業員満足度も約1.8倍に改善されました。

事例2:製造業のCHOが変えた「評価制度」

従来の年功序列型評価から、コンピテンシー(能力)に基づく評価制度へ移行。CHOの主導により制度設計・運用がスムーズに行われ、若手の定着率が向上。


CHO導入の注意点とリスク

  • 名称の混乱回避:CHOと人事部長が混在することで混乱が起きないよう、責任と役割を明確化する必要があります。
  • 権限不明瞭による形骸化:CHOが意思決定に参加できない場合、制度導入が形骸化するリスクがあります。
  • 人材の育成と確保:中小企業ではCHOにふさわしい人材が社内にいないケースもあり、外部登用や育成計画が必要です。

CHOの今後と中小企業への可能性

CHOは、単なる“肩書”ではなく、企業文化と人的資源を強化し、経営の舵取りを支える中核的存在です。中小企業でも規模の大小を問わず、「人を活かす経営」を実践するためには、CHO的な視点を持つ人材を登用・育成することが求められます。


まとめ:人を重視する経営が未来を切り開く

CHOの導入は、人材戦略の見直しや人を軸にした経営に本格的に踏み出す第一歩です。激変する社会環境の中で、経営と人事の橋渡しをするCHOの存在は、企業の競争力と持続可能性を高める鍵となります。


まずは一歩踏み出しましょう!

「人材が定着しない」「経営と人事が連携していない」…そんな課題を抱える中小企業こそ、CHO導入を検討すべき時です。ご自身の会社の人材戦略を今一度見直し、未来への第一歩を踏み出してみませんか?

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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