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2024-05-21

キャッシュ・バランス・プラン(Cash Balance Plan)

キャッシュ・バランス・プラン(Cash Balance Plan、以下CBプラン)は、確定拠出型年金の特徴を取り入れた確定給付型年金の一種で、アメリカを中心に普及している代表的なハイブリッド型(混合型)年金制度です。日本では2002年4月に初めて認可され、以降多くの企業で導入が進んでいます。本稿では、CBプランの基本的な仕組み、特徴、利点と欠点について詳述します。

1. キャッシュ・バランス・プランの基本的な仕組み

CBプランは、確定給付型年金(Defined Benefit Plan、以下DBプラン)の一種ですが、その給付の計算方法が従来のDBプランとは異なります。従来のDBプランでは、従業員の給付額は退職時の給与や勤続年数に基づいて決定されますが、CBプランでは、各従業員の仮想的な個人アカウント(キャッシュバランスアカウント)に、企業が定期的に一定額の寄与金を拠出し、さらに一定の利息を加算する形で給付額が計算されます。

具体的には、次のようなステップで運用されます:

  1. 寄与金の拠出:企業は従業員ごとに設定されたキャッシュバランスアカウントに対して、年次あるいは月次で一定の割合の寄与金を拠出します。この割合は通常、従業員の給与の一定割合(例えば、給与の5%)です。
  2. 利息の加算:拠出された寄与金には、あらかじめ定められた利率(クレジットレート)が適用され、利息が加算されます。この利率は固定である場合もあれば、市場金利に連動する変動利率である場合もあります。
  3. 給付の確定:退職時または退職後の一定期間において、従業員はそのキャッシュバランスアカウントに蓄積された金額を年金として受け取ることができます。この金額は、拠出された寄与金と加算された利息の合計額です。

2. キャッシュ・バランス・プランの特徴

CBプランは、その仕組みから以下のような特徴を持っています:

  1. 透明性と理解しやすさ:従業員は自分のキャッシュバランスアカウントの残高をいつでも確認できるため、将来の年金額を明確に把握することができます。これは、従来のDBプランに比べて非常に透明性が高く、理解しやすい点です。
  2. リスク分担:従来のDBプランでは、年金資産の運用リスクは企業が全て負担しますが、CBプランでは一定の運用利率が保証されているため、企業のリスクが一部軽減されます。また、従業員も将来の年金額をある程度予測できるため、不確実性が低減します。
  3. フレキシビリティ:CBプランは、企業が拠出する寄与金の割合や利息の計算方法を柔軟に設定できるため、企業の財務状況や従業員のニーズに合わせてプランをカスタマイズすることが可能です。

3. キャッシュ・バランス・プランの利点

CBプランには多くの利点がありますが、特に以下の点が注目されます:

  1. 従業員のモチベーション向上:従業員は、自分のキャッシュバランスアカウントの残高が明確に見えるため、将来の年金額に対する安心感を持つことができます。これにより、企業に対する信頼感や働くモチベーションが向上する可能性があります。
  2. 企業のコスト管理:企業は、毎年の拠出金額を一定に保つことができるため、年金制度にかかるコストを予測しやすくなります。また、運用利率が市場金利に連動する場合、経済状況に応じて柔軟に対応できる点もメリットです。
  3. 法的保護:アメリカでは、CBプランはERISA(Employee Retirement Income Security Act)によって保護されており、従業員の年金資産が安全に保全される仕組みが整っています。これにより、従業員は安心してプランに参加することができます。

4. キャッシュ・バランス・プランの欠点

一方で、CBプランにはいくつかの欠点も存在します:

  1. 運用リスクの一部負担:従来のDBプランに比べて企業の運用リスクは軽減されますが、それでも一定の運用利率を保証する必要があるため、企業は依然として運用リスクを負うことになります。
  2. 導入コスト:CBプランの導入には一定のコストがかかります。特に、既存のDBプランからCBプランへの移行には、制度の再設計や従業員への説明など、多くの手間と費用がかかることがあります。
  3. 規制の複雑さ:CBプランは、ERISAやその他の関連法規に従う必要があり、これに伴う規制や報告義務が複雑です。企業はこれらの規制に対応するために、専門的な知識やリソースを必要とします。

5. キャッシュ・バランス・プランの導入事例

アメリカでは、多くの大企業がCBプランを導入しており、その成功事例も多数報告されています。例えば、大手製薬会社のファイザーやテクノロジー企業のIBMなどが、CBプランを採用し、従業員の年金保障を強化しています。

日本でも、2002年4月の初認可以降、多くの企業がCBプランを導入しています。特に、従来のDBプランのリスクを軽減したい企業や、従業員の年金制度を透明化したい企業にとって、CBプランは魅力的な選択肢となっています。

まとめ

キャッシュ・バランス・プランは、確定拠出型年金の特徴を取り入れた確定給付型年金の一種であり、従来の年金制度に比べて透明性やフレキシビリティが高い点が特徴です。企業にとっては、コスト管理やリスク分担の面で利点があり、従業員にとっては将来の年金額が明確に把握できる安心感があります。しかし、導入コストや規制対応の複雑さなどの課題も存在します。各企業は、自社の状況や従業員のニーズに合わせて、適切な年金制度を選択することが求められます。

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