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2024-06-13

三六協定

三六協定(さぶろくきょうてい)は、日本の労働基準法第36条に基づく協定であり、時間外労働や休日労働に関する規定を定めるものです。一般的に「残業協定」とも呼ばれ、労働者が法定労働時間を超えて働く場合や、法定休日に働く場合に必要とされる重要な協定です。

労働基準法第36条の概要

労働基準法第36条は、工場や事業場ごとに過半数の労働者を組織する労働組合、またはそれがない場合は過半数労働者の代表者と書面による協定を結び、その協定を所轄の労働基準監督署長に届け出ることで、使用者が労働基準法で定められた1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させることを認めています。

この協定があることにより、使用者は法定労働時間を超えて労働者に残業や休日労働を命じた場合でも、労働基準法違反により処罰されることがありません。しかし、協定自体から直接に労働者に残業や休日労働の義務が発生するわけではなく、使用者が労働者に残業や休日労働をさせる場合には、個々の労働者の同意またはそのような労働をさせる合理的な就業規則上の定めが必要です。

三六協定の意義とリスク

三六協定は、労働基準法が定める原則的な労働時間を延長し、休日を削減することを合法化するためのものであり、労働者の生命や健康を危険にさらす可能性があります。そのため、時間外労働や休日労働を行わせる事由や限度等を明確に定めることが必要とされています。

しかし、1998年の労働基準法改正以前には、三六協定の内容や上限に関する明文規定がなく、長時間労働の温床となっているとの批判がありました。そこで、1998年の改正により、主務大臣が限度基準を定めることができるようになり、実際に大臣告示が発出されました(平成10年労働省告示第154号)。しかし、この告示は行政指導の根拠を与えるにとどまり、それに違反する三六協定の効力を否定するものではありませんでした。さらに、特別な事情がある場合には協定所定の限度基準を超えることができる特別条項も許容されていました。

働き方改革関連法による規制強化

長時間労働が原因で過労死が社会問題化したことを受け、2018年に働き方改革関連法が成立しました。この法律により、罰則付きの絶対的上限が定められることとなりました。具体的には、1か月について45時間、1年について360時間を原則的な限度時間とし、特別条項を用いる場合でも、1年について720時間以内、および1年のうち6か月以内の期間において、1か月100時間未満、または2~6か月平均80時間以内にしなければならないという上限が設けられました。この上限を超えた時間外労働や休日労働を行わせた場合には、罰則が科されることになります(労働基準法119条)。

この規定は労働者の安全を守るために重要な意味を持っていますが、その上限がいわゆる過労死ラインと同様であるため、さらなる短時間化が必要であるとの批判もあります。特に、労働者の健康を守る観点から、さらに厳しい労働時間の管理が求められている状況です。

三六協定の具体的な内容と手続き

三六協定を結ぶためには、事業場ごとに労働者の過半数を代表する労働組合、または過半数労働者の代表者と書面による協定を締結しなければなりません。この協定書には、時間外労働や休日労働を行わせる事由や、時間外労働の上限時間、休日労働の範囲などを具体的に記載する必要があります。

協定書を作成したら、所轄の労働基準監督署長に届け出ることで、その効力が発生します。この手続きを経ずに時間外労働や休日労働を行わせた場合、労働基準法違反となり、使用者には罰則が科されることになります。

三六協定の限界と今後の課題

三六協定は労働者の労働条件を柔軟に調整するための重要な手段である一方、長時間労働を助長する要因ともなり得るため、その運用には慎重さが求められます。特に、働き方改革関連法によって罰則付きの上限が設けられたことで、法的な拘束力が強まりましたが、それでもなお、実際の労働時間管理には多くの課題が残されています。

例えば、労働者の同意を得るプロセスの透明性や、公正な代表者の選出方法など、労使間の信頼関係を築くための取り組みが重要です。また、労働時間の短縮を図るためには、業務効率化や生産性向上を図ることも不可欠です。これらの取り組みを通じて、労働者が健康で働きやすい環境を整えることが求められます。

結論

三六協定は、日本の労働法制において時間外労働や休日労働を適法化するための重要な仕組みです。その歴史や法改正の経緯を理解することで、労働者の権利と健康を守るための重要なポイントが見えてきます。今後も、労働者の健康と働き方のバランスを保つための適切な運用とさらなる改善が求められています。

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