法定雇用率
はじめに
法定雇用率は、一定規模以上の企業や公共団体に対して、障害者雇用の最低比率を義務付ける制度です。この比率は障害者雇用促進法に基づいており、企業は適切に対応する必要があります。本記事では、法定雇用率の概要、最新の改定内容、企業が守るべきポイントについて解説します。
法定雇用率の概要
法定雇用率とは、企業や国・地方公共団体などが雇用する全従業員数に対する障害者の最低比率を指します。この比率は、障害者の社会的自立と共生社会の実現を目指し、障害者雇用促進法により義務化されています。法定雇用率は定期的に見直され、最新の数値は以下の通りです。
法定雇用率の最新動向
2023年の改正では、法定雇用率の引き上げが決定されました。具体的な内容は次のとおりです。
民間企業の法定雇用率
- 2024年4月:2.5%
- 2026年7月:2.7%
国・地方公共団体・特殊法人の法定雇用率
- 2024年4月:2.8%
- 2026年7月:3.0%
都道府県教育委員会の法定雇用率
- 2024年4月:2.7%
- 2026年7月:2.9%
適用対象事業所の範囲拡大
法定雇用率の適用は従業員43.5人以上の事業所に限定されていました。しかし、2024年4月からは従業員40.0人、2026年7月からは37.5人以上の事業所にも適用されるようになります。これにより、中小企業にも法定雇用率への対応が求められるようになるため、企業側には一層の準備が必要です。
法定雇用率に達しない場合の罰則
従業員100人を超える事業主が法定雇用率を達成できない場合、不足する障害者1人あたり月額5万円の納付金を国に納める必要があります。また、毎年、厚生労働省が法定雇用率未達成かつ改善の見られない企業名を公表しています。企業の評判やブランドイメージへの影響を避けるためにも、法定雇用率の達成は重要です。
法定雇用率を上回った場合のメリット
一方、法定雇用率を上回る企業には、障害者雇用調整金や報奨金が支給されます。
- 100人を超える事業所: 超過障害者1人あたり月額2万7000円の調整金
- 100人以下の事業所: 超過障害者1人あたり月額2万1000円の報奨金
このような制度により、障害者雇用に積極的に取り組む企業をサポートし、全体の雇用率向上を目指しています。
対象障害者の範囲
法定雇用率の適用対象は、身体障害者、知的障害者、精神障害者の3つのカテゴリーにわたります。1997年の法改正で知的障害者が対象となり、2018年度からは精神障害者も対象に含まれるようになりました。さらに、法定雇用率の算出においては、以下のような計算方法が採用されています。
障害者のカウント方法
- 重度障害者: 1人を2人分としてカウント
- 短時間労働の障害者: 1人を0.5人分としてカウント
このカウント方法により、企業は自身の雇用状況に合わせて適切に対応できます。
法定雇用率達成企業の割合と課題
厚生労働省によると、2022年6月時点で民間企業が雇用している障害者数は61万3958.0人、障害者雇用率は2.25%と過去最高を記録しました。しかし、法定雇用率を達成している企業の割合は48.3%にとどまります。この背景には、作業設備の整備や介助施設の導入など、企業側の負担が重くなる問題があります。
法定雇用率への対応策と支援
企業が法定雇用率を達成するためには、障害者が働きやすい環境を整える必要があります。政府も以下のような支援策を提供しています。
助成金制度の活用
企業が障害者の雇用に取り組む際には、各種助成金制度を活用することが可能です。例として、「障害者雇用納付金制度」では、企業間の負担の公平を図り、障害者雇用を促進するための資金を提供しています。
就労支援機関の利用
障害者雇用に関する専門的な知識を持つ就労支援機関を活用することで、適切な雇用管理や環境整備のアドバイスを受けられます。これにより、企業は効率的に法定雇用率を達成するための対策を講じることができます。
まとめ
法定雇用率は、障害者の雇用促進と共生社会の実現に向けた重要な制度です。企業がこの制度に対応するためには、最新の法定雇用率の動向を把握し、障害者が働きやすい環境を整備することが必要です。適切な対策を講じることで、企業は社会的責任を果たすとともに、より多様性に富んだ職場を実現することができます。
法定雇用率についてもっと知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門家がサポートいたします。