使用者の記録保存義務
労働基準法第109条に基づく記録保存の重要性
経営層として、労働環境を整備するうえで「記録保存義務」の重要性を理解することは不可欠です。労働基準法第109条では、使用者に対し、以下のような労働関係に関する記録を3年間保存する義務が課されています。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇入れ・解雇に関する書類
- 災害補償に関する書類
- その他の重要書類(例:出勤簿や36協定)
これらの記録を適切に管理しなければ、30万円以下の罰金といった法的リスクを負う可能性があります。本記事では、記録保存の詳細、起算日のルール、違反リスクを回避するためのポイントを解説します。
記録保存義務の対象となる書類
労働者名簿
労働者名簿は、各従業員の個人情報や雇用状況を把握するために必要な記録です。
保存期間の起算日
- 労働者の死亡、退職、または解雇の日を基準とします。
賃金台帳
賃金台帳には、従業員ごとの給与や賞与に関する詳細が記録されています。
保存期間の起算日
- 最後に記入を行った日が基準となります。
雇入れ・解雇に関する書類
採用通知や退職に関する書類は、雇用管理の基本資料として必要です。
保存期間の起算日
- 労働者の死亡または退職の日を基準とします。
災害補償に関する書類
労働災害が発生した際の補償内容や手続きに関する記録です。
保存期間の起算日
- 災害補償が完了した日を基準とします。
その他の重要書類
出勤簿や36協定など、労働環境の適正化に必要な資料も含まれます。
保存期間の起算日
- 書類が完結した日が基準となります。
記録保存のポイント
1. デジタル化の活用
法令は紙の記録だけでなく、電子データでの保存も認めています。クラウドサービスや専用ソフトウェアを活用することで、効率的な管理が可能です。
- メリット:保存スペースの節約、検索性の向上
- 注意点:改ざん防止やバックアップを確実に行う
2. 定期的な見直し
保存期間を過ぎた記録の廃棄や、新たな書類の保存が確実に行われているか、定期的に確認しましょう。
- 年次チェックリストを作成
- 書類管理担当者を指定
3. 法改正への対応
労働基準法や関連法規は改正される可能性があります。最新の法令に基づき、適切な対応を行いましょう。
- 労務管理の専門家や弁護士への相談
- 改正情報の定期的な確認
違反時のリスク
記録保存義務に違反した場合、使用者は30万円以下の罰金が科される可能性があります。それだけでなく、従業員や取引先からの信頼を失うリスクも考慮すべきです。
違反例
- 保存期間内の記録を誤って廃棄
- 記録内容が不正確または不十分
まとめ
記録保存義務は、単なる法的義務ではなく、労務管理の基本であり、企業の信頼性を高める要素でもあります。以下の3つのポイントを意識して、適切な管理を行いましょう。
- 書類の正確な保存と起算日の確認
- デジタルツールを活用した効率化
- 法改正への柔軟な対応
経営層として、これらを徹底することで法的リスクを回避し、労働環境の改善に寄与できます。まずは現在の記録管理状況を見直し、必要な改善策を実行に移してください。
「記録管理の専門家に相談する」「最新の労務管理ツールを導入する」などの具体的なアクションを検討してみませんか?適切な記録保存が、企業の未来を守ります。