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【徳島を拠点に全国対応】企業の経営課題を共に解決すべく専門家(社会保険労務士/中小企業診断士)として活動しています。
2025-04-17

経営者が知るべき「解雇予告義務」

はじめに

「突然辞めてもらうことにした」——こんな対応をしていませんか?
実は、労働者を一方的に解雇する場合には「解雇予告義務」という法律上のルールが存在します。これを怠ると、30日分以上の賃金の支払い義務や、トラブルの火種となるリスクがあります。特に中小企業や個人事業主にとっては、解雇トラブルが命取りになることも。

本記事では、「解雇予告義務」とは何か、例外や注意点、トラブル回避のための実務的なポイントをわかりやすく解説します。経営者として知っておくべき法律の基礎知識を、今ここで身につけましょう。


解雇予告義務とは?

労働基準法第20条の規定

労働基準法第20条は、使用者が労働者を解雇する際には原則として30日前までに予告を行うことを義務づけています。これを怠った場合、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

解雇予告義務の目的

この制度は、労働者に対し生活の立て直し期間を与えるためのものです。突然の解雇で路頭に迷うことのないよう、最低限の生活保障が図られているのです。


解雇予告の具体的な方法

書面で通知するのが原則

解雇を伝える際には、書面による通知が推奨されます。法的には口頭でも有効ですが、トラブル防止のためには必ず「解雇通知書」を発行し、内容証明郵便などで送付するのが安心です。

通知の内容に含めるべき事項

  • 解雇の事実
  • 解雇の理由(合理性が必要)
  • 解雇日
  • 予告期間または解雇予告手当の支給有無

解雇予告手当とは?

解雇予告を行わない場合の代償

使用者が即時解雇を行いたい場合は、労働者に対して30日分以上の平均賃金を支払う義務があります。これが「解雇予告手当」です。

平均賃金の算出方法

直近3か月の賃金総額を、該当期間の総日数で割って計算します。残業代や通勤手当なども含まれるため注意が必要です。


解雇予告義務の例外

即時解雇が認められるケース

労働基準法では、以下のようなケースであれば解雇予告義務は免除されるとしています。

1. 労働者側の重大な問題行動(懲戒解雇)

  • 横領や暴力行為
  • 無断欠勤が長期にわたる
  • 機密情報の漏洩 など

ただし、客観的な証拠が必要であり、懲戒解雇として正当と認められるかは慎重な判断が求められます。行政官庁(労働基準監督署)への確認が必要です。

2. 天災その他やむを得ない事由による事業継続の困難

例えば、地震や火災などで事業自体が継続不可能になった場合などです。ただし、この場合も行政官庁(労働基準監督署)への確認が望ましいです。

3. 試用期間中の労働者(14日以内)

試用期間の初期14日間以内であれば、解雇予告なしで契約解除が可能です。ただし、試用期間開始後14日以内の解雇は、解雇予告や解雇予告手当が不要になるというだけで、解雇がしやすいという意味ではありません。


解雇トラブルを避けるための実務ポイント

就業規則の整備は必須

就業規則に解雇に関する明確なルールを記載しておくことで、トラブルを未然に防げます。従業員が10人以上の場合は就業規則の作成・届出が義務です。

解雇理由は「客観的合理性」と「社会的相当性」が必要

裁判例では、解雇が有効とされるには下記2点が必要とされています。

  • 客観的合理性:その理由が事実に基づいており、合理的であること
  • 社会的相当性:解雇という処分が重すぎないこと

安易な解雇は「無効」とされ、復職命令や損害賠償が命じられるケースも。

労働基準監督署や専門家への相談

疑問点がある場合は、労働基準監督署への相談や、社会保険労務士などの専門家にアドバイスを求めることが重要です。


よくある誤解と注意点

「業績悪化」だけでは即時解雇はできない

経営者の中には「赤字だから解雇は仕方ない」と考える方もいますが、業績悪化だけでは解雇の正当性は認められません。

パート・アルバイトも対象

解雇予告義務は、雇用形態に関わらず適用されます。パートやアルバイト、契約社員も対象です。


まとめ

解雇予告義務は、労働者保護の観点から厳しく運用されている法律のひとつです。中小企業や個人事業主であっても、「知らなかった」では済まされません。適切な手順を踏まなければ、金銭的負担や reputational damage(評判リスク)を被る可能性もあります。

経営者として、以下のポイントを押さえておきましょう:

  • 解雇は原則30日前に予告、または予告手当の支給が必要
  • 懲戒解雇や天災等には例外があるが、慎重な対応が求められる
  • 就業規則と書面による通知はリスク回避の鍵

「うちは小規模事業だから大丈夫」と思っていませんか?労務トラブルは企業規模を問いません。今すぐ、あなたの就業規則や解雇手続きが適法かどうか見直してみましょう。
不安があれば、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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