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【徳島を拠点に全国対応】企業の経営課題を共に解決すべく専門家(社会保険労務士/中小企業診断士)として活動しています。
2025-04-25

成長企業の切り札「ストックオプション」

はじめに|ストックオプションは中小企業の武器になる

企業の成長には「ヒト・モノ・カネ・情報」のリソースが必要不可欠ですが、とりわけスタートアップや中小企業では「人材の確保とモチベーション維持」が大きな課題です。

そんな中、注目されているのがストックオプション制度。もともとは上場企業の報酬制度として始まりましたが、今や未上場の中小企業でも導入されつつあります。

本記事では、中小企業経営者や個人事業主の方々を対象に、ストックオプションの仕組み、導入メリット・デメリット、実際の設計・運用方法までをわかりやすく解説します。


ストックオプションとは何か

ストックオプションの基本的な仕組み

ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格(=権利行使価格)で自社株式を取得できる権利のことを指します。これは「株を買う権利」であり、義務ではありません。

社員や役員にとっては、株価が上昇した時に行使することで差額利益を得られるインセンティブ制度になります。

例えば、権利行使価格が1株500円、実際の株価が1,000円になっていれば、1株あたり500円の利益を得られる計算です。


権利行使価格と市場価格の関係がカギ

ストックオプションで利益が出るのは、実際の株価が権利行使価格を上回った場合です。

  • 株価 > 権利行使価格 → 利益が出る(行使メリットあり)
  • 株価 < 権利行使価格 → 利益が出ない(行使せず無効)

従って、社員や役員は株価上昇に対して強い動機を持つことになります。これが企業にとっての大きなメリットです。


ストックオプションの主なメリット

経営者にとってのメリット

社員のモチベーションアップと業績向上

ストックオプションは報酬制度であると同時に、経営参画意識を高める手段でもあります。

社員や役員が企業の成長に直接的な利益を見出すことで、短期的な成果だけでなく中長期的な貢献が期待できます。

優秀人材のリテンション(引き止め)

権利行使可能期間が設定されているため、社員は一定期間在籍しなければ権利を失うことになります。
これにより、優秀な人材が辞めにくくなり、中長期的な戦力としての確保が可能です。

キャッシュアウトを伴わない報酬

ストックオプションは現金を使わずに報酬を与える方法です。
資金に余裕のない中小企業でも、給与の代替的なインセンティブ制度として有効です。


社員・役員にとってのメリット

成功報酬型のリターンが得られる

企業の成長に貢献すればするほど、株価の上昇という形で大きな利益が得られる可能性があります。
特にIPO(株式上場)を目指す企業であれば、行使によるリターンは非常に大きくなります。

経営者視点で働く動機づけ

自社株に対するオーナーシップ意識が生まれることで、指示待ち型ではなく自律的な働き方へとシフトしていく傾向が強まります。


ストックオプションのデメリットと注意点

経営者側のデメリット

退職リスクのある人材への付与

ストックオプションの付与を報酬目当てで受け取っただけの社員は、株式上場や株価上昇後に退職してしまうリスクがあります。
制度設計においては、在籍条件や権利消滅条項の設計が重要です。

株式の希薄化による既存株主への影響

ストックオプション行使後に新株が発行されることで、既存株主の持ち分比率が下がる(希薄化)ことになります。
経営判断としての慎重な付与設計が求められます。


従業員側のデメリット

株価が上がらないと無意味

株価が低迷すれば、ストックオプションを行使しても利益が出ません。むしろ、期待外れでモチベーションが下がる可能性もあります。

権利行使に資金が必要

ストックオプションを行使するには、株式取得代金(権利行使価格×株数)を支払う必要があります。
場合によっては高額になるため、事前に資金計画を立てる必要があります


ストックオプションの設計と導入手順

ステップ1|目的と対象者の明確化

  • なぜ導入するのか(資金不足?人材確保?モチベーション?)
  • 誰に付与するのか(役員、従業員、外部パートナー等)

目的と対象者をしっかり定めることで、制度設計の方向性が明確になります。


ステップ2|付与条件・権利行使期間の設計

主な設計項目

  • 権利行使価格
  • 付与日・権利確定日(ベスティング)
  • 権利行使期間
  • 権利失効条件(退職・解雇・死亡等)

制度を長期に渡って維持するには、透明性と公平性のある設計が不可欠です。


ステップ3|税制適格ストックオプションの活用

税制適格ストックオプション(いわゆる「適格SO」)を活用することで、権利行使時の課税を回避し、売却時まで税金を繰延べることが可能です。

ただし、一定の条件(権利行使価格や付与人数の上限など)を満たす必要があります。税理士や社労士のサポートが重要です。


ストックオプション導入事例(中小企業)

事例1|ITベンチャー企業の導入成功例

社員3名の段階でストックオプションを導入し、上場後に数千万円の報酬を得たケース
早期から制度を導入することで、社員のロイヤリティと経営参画意識を高めた好例です。


事例2|製造業でのミドルマネジメント向け制度

現金報酬だけでは確保が難しい中間管理職に対してインセンティブとして導入。株式報酬により社内の一体感を醸成。


まとめ|ストックオプションは中小企業成長のカギ

ストックオプションは、社員に経営者視点を持たせる「究極のインセンティブ制度」です。
導入には慎重な制度設計が必要ですが、うまく活用すれば中小企業にとっての大きな武器となります。

以下のような方は、ぜひ導入を検討してみてください。

  • 優秀な人材を長く確保したい
  • 業績向上のインセンティブを作りたい
  • 上場やM&Aを視野に入れている

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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