働き方改革を後押し!中小企業にこそメリット大の「フレックスタイム制」
はじめに:多様な働き方が求められる今、注目の制度とは?
少子高齢化、人材不足、ワークライフバランスの重視など、現代の日本社会では従来型の労働時間制度が限界を迎えています。こうした中で注目されているのが「フレックスタイム制」です。
フレックスタイム制とは、労働者が自身のライフスタイルに合わせて、始業・終業時間をある程度自由に決定できる制度です。企業にとっては、従業員のモチベーション向上や生産性向上が期待できるうえ、優秀な人材の確保や定着にもつながる大きなメリットがあります。
本記事では、中小企業経営者や個人事業主の方に向けて、フレックスタイム制の仕組み、導入のポイント、注意点などをわかりやすく解説します。
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制の基本的な仕組み
フレックスタイム制とは、一定の時間帯(コアタイム)を除き、労働者が始業・終業時間を自由に設定できる柔軟な労働時間制度です。大きく分けて以下の3つの要素から構成されます。
1. コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)
企業が業務上必要な時間帯を「コアタイム」として設定し、全従業員がその時間帯には勤務する必要があります。たとえば「10時〜15時」が一般的です。
2. フレキシブルタイム(自由に働ける時間帯)
コアタイムの前後で、労働者が自由に始業・終業を選べる時間帯です。たとえば「7時〜10時」「15時〜19時」などが設定されます。
3. 清算期間(労働時間を計算する単位)
通常、1か月以内の期間を設定し、その期間内で所定労働時間を満たすように調整します。
制度導入の背景と世界の動向
フレックスタイム制は、1967年にドイツのメッサーシュミット社で初めて導入されました。以降、ヨーロッパやアメリカで広まり、日本でも1973年頃から大手企業を中心に採用が進みました。
導入の背景には、以下のような社会的・経済的要請がありました。
- 通勤ラッシュの緩和(時差出勤)
- 病欠・遅刻・早退の減少
- 育児・介護との両立
- 労働生産性の向上
- 人材確保と定着率の向上
中小企業がフレックスタイム制を導入するメリット
1. 働きやすさの向上による人材確保・定着
優秀な人材ほど、柔軟な働き方を求めています。フレックスタイム制を導入することで、応募者数が増加し、従業員の定着率も高まる傾向にあります。
2. 生産性の向上
従業員が最も集中できる時間帯に働くことができれば、アウトプットの質も量も向上します。無駄な残業や非効率な会議も減少し、業務効率が飛躍的に上がります。
3. 時間外労働の削減とコストの最適化
一定の清算期間内で労働時間を調整できるため、日ごとの残業管理ではなく、全体の労働時間を効率的に運用できます。これにより残業代の削減にもつながります。
導入のための手続きと法的要件
フレックスタイム制の導入要件
- 労使協定の締結 労働時間、コアタイム、フレキシブルタイム、清算期間などについて、労使協定を締結する必要があります。
- 就業規則への明記 フレックスタイム制の内容を就業規則に明記し、労働者に周知する義務があります。
- 労働時間の管理体制 勤怠管理システムの見直しや、柔軟なシフト調整体制の構築も求められます。
導入時の注意点と落とし穴
1. 過重労働や勤務時間の偏り
従業員の自由な勤務時間に任せすぎると、偏った働き方が常態化し、逆に疲労や不公平感を生むこともあります。管理者側のモニタリングが重要です。
2. 社内コミュニケーションの断絶
コアタイムが短い、あるいは重ならない場合、チーム内の連携が取りにくくなることがあります。業務内容に応じたコアタイムの設定が不可欠です。
3. 業種によっては向かないケースも
サービス業や来客対応が必要な業種では、フレックスタイム制の導入が難しい場合もあります。業務形態との相性を事前に精査しましょう。
フレックスタイム制導入のステップ
- 現状分析と課題の洗い出し 業務フローや従業員の勤務状況を見直し、柔軟な勤務体制の必要性を明確にする。
- 社内アンケートの実施 従業員のニーズや不安を把握し、導入時の障壁を減らす。
- 制度設計と労使協議 運用ルールや時間帯設定を検討し、労使間で合意形成を図る。
- 試験導入とフィードバック 一部部署でトライアル導入し、課題や改善点を洗い出す。
- 本格導入と継続的な見直し 社内全体に展開し、定期的に制度の有効性を検証・改善する。
まとめ:柔軟な働き方が企業を強くする
フレックスタイム制は、従業員の自律性を高め、企業にとっても多くの恩恵をもたらす労働時間制度です。特に中小企業にとっては、人材確保や生産性向上という重要な課題を解決する有力な手段となります。
とはいえ、制度設計や運用には慎重さも必要です。まずは小規模なトライアルから始め、自社に合った運用スタイルを確立していきましょう。
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[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
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