ROA(総資産利益率)とは?資産活用力の見える化
はじめに|ROAが企業経営にもたらす「見える化」の力
中小企業においても、収益性と資産効率のバランスを適切に評価することが、安定した経営と成長の鍵となります。そこで重要となる指標の一つが「ROA(Return on Assets:総資産利益率)」です。
本記事では、ROAの基本概念から計算式、改善策、他の財務指標との違いまでをわかりやすく解説し、経営者が自社の健全性を見極めるための実践的知識を提供します。
ROA(総資産利益率)とは何か?
ROAの定義と意味
ROAとは、「企業が保有する全ての資産をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているか」を示す財務指標です。
基本式:
ROA(%)= 利益 ÷ 総資産 × 100
ここでの「利益」には通常、営業利益、経常利益、あるいは当期純利益のいずれかが用いられます。目的に応じて使い分けられる点に注意しましょう。
ROAの特徴と注目される理由
- 総資産全体に対する利益の効率性を表す
- 株主だけでなく「債権者」にとっても重要な判断材料
- 米国ではROEと並び、投資家の主要判断指標として広く活用
- 日本でも近年、資本効率経営を評価するために重視される傾向
ROAの具体的な計算方法と活用法
ROAの分解式
ROAは以下のように分解して分析することができます:
ROA = 売上高利益率 × 総資産回転率
売上高利益率(利益 ÷ 売上高)
→ 収益性を表します。
総資産回転率(売上高 ÷ 総資産)
→ 資産の活用効率を表します。
このように、ROAは「どれだけ効率的に資産を使って、利益を上げているか」を多角的に分析できる便利な指標なのです。
ROAの実務上の注意点(平均資産の使用)
ROAの分母である「総資産」は、期末時点の数値ではなく**期首と期末の平均値(期中平均)**を用いるのが一般的です。
理由は、利益が1年間を通じて得られる数値であるため、資産も年間を通じた平均で見るのが適切だからです。
ROAが低い・高いとはどういうことか?
ROAが高い企業の特徴
- 利益率が高く、無駄な経費を抑えている
- 総資産を効率よく活用して売上を上げている
- 過剰な在庫や不要な設備投資を避けている
ROAが低い企業が抱えるリスク
- 資産の遊休化(未活用資産)が発生している
- 利益率が低く、事業モデルの見直しが必要
- 投資家や金融機関からの評価が下がる可能性
ROA改善のための実践的アプローチ
① 売上高利益率の改善
- 経費の見直し、業務効率の向上
- 高付加価値商品の開発
- 顧客単価の引き上げ
② 総資産回転率の改善
- 遊休資産の売却
- 過剰在庫の圧縮
- 設備投資の精査(本当に必要か)
③ 業種ごとの平均値との比較で方向性を確認
ROAは業種によって平均値が異なるため、自社だけでなく業界平均と比較することで改善余地や強みが見えてきます。
ROAと他の財務指標との違いと組み合わせ方
ROEとの違い
- ROE(自己資本利益率):株主資本に対する利益効率
- ROA(総資産利益率):企業全体の資産に対する利益効率
ROEは自己資本のみに着目するのに対し、ROAは借入なども含めた「企業のすべての資産の運用効率」を示します。
中小企業がROAを経営に活かすには?
① 資産管理の視点を持つ
固定資産や在庫といった「経営資源」が、利益につながっているかを可視化するため、ROAを定期的にチェックすることが重要です。
② 財務分析とKPIの一体化
ROAを経営目標のKPIに組み込み、営業利益率や在庫回転率と連動させた管理体制を整えることで、数字を活かした意思決定が可能になります。
まとめ|ROAは「資産の働きぶり」を映す経営の鏡
ROAは、単なる財務指標ではなく、企業の「経営効率」そのものを映し出す鏡です。
売上・利益だけでは見えない資産の稼働状況を見える化し、企業経営をより本質的に改善するための羅針盤として、積極的に活用していきましょう。
まずは自社のROAを確認してみましょう!
あなたの会社のROAはどれくらいですか?
まずは決算書を開いて、ROAを計算してみてください。もし改善が必要なら、売上構造や資産の使い方を見直す絶好のチャンスです。
経営判断に強くなるために、ROAの活用を始めてみましょう!
[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
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