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2025-06-24

職務特性モデルとは?社員のやる気を引き出す5つの視点

はじめに:社員のやる気、見えていますか?

「うちの社員、どうもやる気が感じられない」「離職率が高くて困っている」――こうした悩みは、多くの中小企業で共通する課題です。実は、社員のモチベーションを高めるには“仕事内容”そのものに注目する必要があります。

本記事では、ハックマンとオルダムによって提唱された「職務特性モデル(Job Characteristics Model)」をもとに、やる気を引き出す職場づくりのヒントを解説します。

職務特性モデルとは?

仕事の構造がモチベーションを左右する

職務特性モデルとは、仕事の「設計(構造)」に着目し、仕事の内容そのものが従業員のモチベーションに影響するという考え方です。米国の心理学者ハックマン(J. Richard Hackman)とオルダム(Greg Oldham)により提唱されました。

このモデルでは、以下の5つの「職務特性」が重要とされています。

職務特性モデルの5つの基本要素

① 技能多様性(Skill Variety)

単調な仕事はモチベーションを下げる

異なるスキルや才能を必要とする仕事ほど、従業員にとって「やりがい」になります。たとえば、事務作業だけでなく、顧客対応やプレゼン資料の作成も含む仕事のほうが、多様なスキルを使うことができ、退屈さを感じにくくなります。

② タスク完結性(Task Identity)

仕事の「一部」ではなく「全体」を見せる

仕事が全体のどこに位置しているか、完了までのプロセスを見通せると、従業員は達成感を持ちやすくなります。逆に、流れ作業のように「どこまで関与しているのかわからない」と、仕事の意義を感じにくくなります。

③ タスク重要性(Task Significance)

仕事の価値を実感できる仕組みを

自分の仕事が他者や社会にどのような影響を与えているかが明確であると、モチベーションは高まりやすくなります。中小企業であれば「地域に貢献している」「お客様の生活を支えている」など、仕事の意義を言語化することが有効です。

④ 自律性(Autonomy)

裁量があれば、責任感もやる気も育つ

従業員が仕事の進め方や時間配分などについてある程度自由に決められると、主体性と責任感が育ちます。「やらされ感」のある業務ばかりでは、成果にも悪影響が出やすくなります。

⑤ フィードバック(Feedback)

評価の「見える化」で自信と学習意欲を

自分の仕事の結果がどうだったのかが明確にフィードバックされると、従業員は自己評価や改善につなげやすくなります。「褒められない」「何も言われない」職場では、やる気も育ちにくいものです。

職務特性モデルを活用するメリット

離職率の低下につながる

やりがいを感じる職場では、従業員が定着しやすくなります。特に中小企業にとっては、人材流出の防止は重要な経営課題です。

生産性が向上する

モチベーションが高い従業員は、業務効率も上がり、結果として売上や顧客満足度の向上にもつながります。

採用・育成戦略の改善にも活用できる

職務内容を見直すことで、より効果的な採用基準や教育計画の策定も可能になります。

中小企業での活用方法

職務分析から始める

まずは、現在の職務内容を分析し、5つの要素がどの程度含まれているかを確認します。

  • 単純作業に偏っていないか?
  • 仕事の全体像を把握できているか?
  • 意義や影響を伝えているか?
  • 裁量の余地はあるか?
  • フィードバックの仕組みはあるか?

ジョブクラフティングの導入

従業員自らが仕事のやり方や意味づけを見直す「ジョブクラフティング(Job Crafting)」も職務特性モデルと相性が良い施策です。

評価制度と連動させる

フィードバックや自律性の確保は、人事評価制度とも密接に関係しています。目標管理制度(MBO)や360度評価などとの連動も検討するとよいでしょう。

導入企業の事例紹介(仮想ケース)

たとえば、地域密着型の製造業A社では、作業工程を細分化しすぎていた結果、社員の離職が相次いでいました。そこで、工程を「担当制」に見直し、製品完成までを一人が主導できるように変更。自律性と完結性が高まり、離職率が半年で約50%減少しました。

職務特性モデルを経営に取り入れるポイント

  • 「仕事のやりがい」は制度より先に「職務設計」にあり
  • 5つの特性すべてを満たす必要はなく、強化できる要素から着手
  • 経営者自らが「やる気を引き出す仕事づくり」の旗振り役に

まとめ:人材を活かすには、仕事の「質」を見直そう

職務特性モデルは、大企業だけでなく中小企業にとっても極めて有効な考え方です。特別な制度や高額な投資を必要とせず、「日々の仕事の中身をどう組み立てるか」によって、社員のモチベーションや定着率、生産性までを大きく変えることができます。

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