自動昇給制度とは?メリット・デメリットから導入の注意点まで徹底解説
はじめに
従業員の給与体系を考えるうえで、「昇給制度」は避けて通れないテーマです。特に、勤続年数や年齢に応じて自動的に昇給する「自動昇給制度」は、一定の公平性を担保しやすい仕組みとして多くの企業に導入されてきました。しかし、昨今では人件費の固定化やモチベーションの低下といった課題も指摘されています。
本記事では、自動昇給の基本的な仕組みやそのメリット・デメリット、導入・見直し時のポイントについて、中小企業経営者・個人事業主の視点から分かりやすく解説します。
自動昇給とは?
自動昇給の定義
自動昇給とは、従業員の業績や能力に関係なく、勤続年数や年齢といった客観的な要素に基づいて、定期的に賃金が上がる仕組みです。多くの場合、年に1回、4月などのタイミングで実施されます。
定期昇給との違い
「定期昇給」は広義では自動昇給を含みますが、厳密には勤続年数に応じた昇給(=自動昇給)と、評価に応じて昇給額を変える「査定昇給」に分けられます。
自動昇給のメリット
従業員の安心感を高める
勤続すれば確実に給与が上がる仕組みは、生活設計の目安となり、従業員の安定志向に応える制度です。
人事評価の簡略化
能力評価や業績評価に基づかないため、複雑な人事評価制度を用意しなくてもよいというメリットがあります。
従業員の定着率向上
昇給が約束されていることで、長期的な勤務を前提とする雇用関係が築きやすくなります。
自動昇給のデメリット
成果主義と相容れない
能力や成果を無視して昇給する仕組みは、成果主義的な人材マネジメントと対立します。
人件費の固定化と肥大化
景気や企業業績に関係なく昇給するため、人件費が年々増加し、経営を圧迫するリスクがあります。
モチベーションの低下
成果を出しても出さなくても昇給額が同じであれば、意欲やチャレンジ精神が低下する恐れがあります。
中小企業が自動昇給を導入する際の注意点
業績と連動した柔軟な制度設計を
完全な自動昇給ではなく、業績連動や査定評価と組み合わせた昇給制度が望まれます。
モデル年収例を明示する
勤続年数に応じたモデル年収を提示することで、従業員に将来の給与イメージを持たせることができます。
総額人件費のシミュレーション
長期的な視点で、総人件費がどのように推移するかを事前に試算し、経営計画と整合性を取る必要があります。
自動昇給制度の代替案
査定昇給制度(成果主義)
業績評価やスキル評価を基にした昇給制度で、能力向上やチャレンジ精神を引き出す仕組みです。
グレード制・職能給との連動
一定の職務レベルやスキル水準に到達した段階で昇給する職能給制度と組み合わせることで、納得感を高められます。
自動昇給を見直す企業の動き
脱年功序列の潮流
近年は、大企業でも自動昇給制度を廃止し、職務・成果・貢献度を軸とした人事制度への移行が進んでいます。
中小企業の実態に合わせた制度設計
中小企業は大企業とは異なる経営環境にあるため、自社の資源やビジョンに合った独自の昇給制度が重要です。
まとめ:自社に合った昇給制度の設計を
自動昇給は従業員にとって安心感のある制度ですが、企業の成長や人材戦略と必ずしも一致するとは限りません。業績とのバランス、人件費管理、従業員のモチベーションといった観点から、慎重に導入・見直しを行うことが求められます。
今の時代に合った昇給制度を構築し、持続可能な人材マネジメントを実現しましょう。
「御社の昇給制度、時代に合っていますか?
給与制度の見直しや自動昇給の導入可否についてお悩みの方は、ぜひ専門家にご相談ください。中小企業の実情に合わせた最適な制度設計をサポートします。」
[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
人事評価・賃金改定のことなら「社会保険労務士法人あい」へ