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【徳島を拠点に全国対応】企業の経営課題を共に解決すべく専門家(社会保険労務士/中小企業診断士)として活動しています。
2025-07-08

「賞与引当金」とは?中小企業の健全な財務管理に欠かせない基礎知識と実務対応

はじめに:なぜ「賞与引当金」が中小企業経営に重要なのか

賞与は従業員のモチベーション維持に欠かせない一方で、経営者にとっては「突発的支出」となりがちです。特に年2回支給している企業では、決算期に賞与分の原資を正確に把握しておかないと、資金繰りに大きな影響が出ることもあります。
そこで登場するのが「賞与引当金」です。これは、将来支払う予定の賞与に備えて、事前に費用計上しておく会計上の仕組みです。

本記事では、「賞与引当金とは何か」から、「具体的な計上方法」「税務上の注意点」まで、中小企業経営者に必要な情報を徹底解説します。


賞与引当金とは?

賞与引当金の定義

賞与引当金とは、決算日時点で次回支給予定の賞与に対応する労働サービスの提供分に対して、見積もって設定する引当金です。

例)3月決算で賞与を6月と12月に支給している企業の場合、1月〜3月分の労働に対する賞与額を見積もり、決算時に「賞与引当金」として流動負債に計上します。

会計上の目的

  • 費用と収益の対応を適正にする(期間対応)
  • 決算書をより正確にする(発生主義)
  • 突発的な資金流出に備え、経営判断を安定化させる

賞与引当金の仕訳と計上方法

計上のタイミング

決算日時点で、次回賞与支給日に向けた引当を行います。

仕訳の例

(借方)賞与引当金繰入額 XXX円  
(貸方)賞与引当金   XXX円
  • 「賞与引当金繰入額」は損益計算書の費用項目
  • 「賞与引当金」は貸借対照表の流動負債

支給時の仕訳

(借方)賞与引当金 XXX円  
(借方)給与手当  YYY円  
(貸方)現金預金  ZZZ円

※ZZZ円 = XXX円 + YYY円(実際支給額のうち引当済分と未引当分)


賞与引当金の計算方法

基本計算式

1ヶ月あたりの支給額 × 対象月数 × 対象従業員数

具体例

  • 月給:30万円
  • 賞与支給月:6月、12月
  • 計上月:3月末(1月〜3月分を見積もる)
30万円 × 3ヶ月 ÷ 12ヶ月(半年相当) = 7.5万円(1人分)

従業員10名なら、75万円が賞与引当金になります。


税務上の取り扱いと注意点

法人税法上の要件

法人税上、賞与引当金は原則「損金不算入」です。ただし、一定の条件を満たす場合は「未払賞与」として損金算入が可能です。

損金算入の条件(いわゆる「確定した賞与」)

  1. 賞与の支給対象者、金額、支給日が決算前に明確であること
  2. 従業員に通知していること
  3. 決算日から1ヶ月以内に実際に支給されること

誤解しやすいポイント

  • 引当金と未払賞与は会計処理上は似て非なるもの
  • 引当金は「見積もり」、未払賞与は「確定」

中小企業での運用上のポイント

なぜ導入すべきか?

  • キャッシュフローの見通しが立ちやすくなる
  • 決算対策がしやすくなる
  • 税務リスクを軽減できる

よくある課題とその解決法

課題解決策
見積額が毎期変動する定期的な人件費見直しと過去実績の活用
計上漏れ・過大計上専門家(税理士・会計士)と連携する

よくある質問(FAQ)

Q1. 賞与が業績連動型の場合、引当金はどう計上する?

A. 業績評価の基準が明確ならば、合理的な見積もりが可能。業績に大幅な変動がある場合は注意。

Q2. パートやアルバイトにも引当金を設定すべきか?

A. 支給実績があり、今後も支給予定があるなら対象に含めるべき。


まとめ:賞与引当金の理解と実践が健全経営の第一歩

賞与引当金は、単なる会計処理にとどまらず、経営の安定性を高める重要な仕組みです。中小企業においても、賞与の支払いタイミングや金額に応じて適切に引当を行うことで、資金繰りの悪化や想定外の支出を未然に防ぐことが可能です。

「どこまで見積もればいいのか?」「税務上の取り扱いは?」といった悩みもあるでしょうが、制度を正しく理解し、実務に落とし込むことで、経営リスクを大幅に低減できます。


最後に|専門家への相談で確実な運用を

賞与引当金は、経理・税務の知識を要する分野です。不明点がある場合は、税理士や社労士などの専門家に相談することをおすすめします。確実な対応で、会社経営の安心と従業員の信頼を両立しましょう。

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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