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2025-07-16

再就職手当とは?

はじめに:雇用をめぐる現実と「再就職手当」の重要性

人材不足が深刻化するなか、中小企業や個人事業主にとって、即戦力となる人材をいかに早期に確保するかが課題となっています。そんな中、求職者が早期就職を目指す動機付けとなる制度が「再就職手当」です。

この制度を理解しておくことで、雇用側としても制度の趣旨を把握し、適切な採用・労務管理に役立てることができます。今回は、「再就職手当」の仕組みや支給条件、注意点などを分かりやすく解説します。


再就職手当とは?

就業促進を目的とした雇用保険の給付制度

再就職手当は、雇用保険法に基づく「就業促進手当」の一つで、失業中に基本手当(いわゆる失業手当)を受けている人が、所定の条件を満たして早期に再就職した際に支給される一時金です。

制度の目的

  • 早期就職を促進し、就職活動の長期化を防止
  • 求職者の生活安定
  • 雇用保険財政の健全化

再就職手当は、求職者の再チャレンジを支援すると同時に、採用する企業にとっても迅速な人材確保の一助となります。


再就職手当の支給条件

支給対象となる主な要件

以下のような条件をすべて満たす必要があります。

1. 受給資格があること(受給手続き後および待期期間満了後に就職する)

失業保険の基本手当を受給できる状態であり、求職活動を行っていること。

2. 所定給付日数が3分の1以上残っていること

例)所定給付日数が90日なら、31日以上残っている必要があります。

3. 1年以上の雇用が見込まれる就職であること

雇用契約期間が1年以上、かつ常用的な雇用形態(正社員、フルタイム契約社員など)であることが条件です。

4. ハローワークなどの紹介でない就職でもOK

民間紹介や自主応募でも支給対象となります。自己都合の退職で失業手当の給付制限があり、給付制限期間の最初の1カ月間で再就職する場合は、ハローワークもしくは職業紹介事業者からの紹介によって就職しないと支給対象になりません

5. 離職前の会社に再就職していないこと

前職と実質的に同一の事業主への再就職は対象外です。

6. 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと

再就職が決まった後、再就職手当の支給決定までに離職する、もしくは離職予定がある場合でも給付対象外となります。

7. 再就職前の3年間に、再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと

再就職前の3年間に、再就職手当または常用就職支度手当を受給していないことも、再就職手当を受けるための条件の一つです。


支給額の計算方法

支給金額の計算式

再就職手当の金額は、以下の計算式で算出されます。

支給額の基本式

支給残日数 × 基本手当日額 × 支給率(60% or 70%)

支給率の違いについて

  • 70%支給:基本手当の支給残日数が3分の2以上ある場合
  • 60%支給:3分の1以上、3分の2未満の支給残日数がある場合

計算例

所定給付日数90日中、残りが70日。基本手当日額が6,000円の場合:

70日 × 6,000円 × 70% = 294,000円

再就職手当の申請手続き

手続きの流れ

1. 就職が決まったらすぐにハローワークへ報告

就職が決まったら、原則1ヶ月以内にハローワークで「再就職手当の支給申請」を行う必要があります。

2. 必要書類の提出

  • 就職先からの雇用証明書
  • 雇用契約書や内定通知書
  • 本人確認書類
  • 雇用保険受給資格者証

3. ハローワークによる審査と支給決定

審査が完了すれば、指定口座に一時金として再就職手当が振り込まれます。


採用側(企業)が知っておくべきポイント

採用活動に役立つ再就職手当の知識

中小企業や個人事業主が求職者を採用する際、以下の観点でこの制度を活用できます。

1. 早期就職希望者にアピールできる

「うちで就職すれば再就職手当が受け取れます」と説明することで、求職者の応募動機を強化できます。

2. 人材獲得コストの抑制

求職者が早期に職に就くことで、採用・教育コストの負担が軽減される可能性があります。

3. 定着率向上の工夫も必要

再就職手当を目当てに入社してすぐに辞めるケースを防ぐため、試用期間や定着支援制度の整備が大切です。


よくある質問(FAQ)

求職者側の疑問に企業も答えられるようにしておこう

Q1. 再就職手当は何度でも受け取れますか?

原則として、1回の離職に対して1回のみ支給されます。

Q2. アルバイトやパートでも対象ですか?

原則として常用的な雇用が条件となるため、パートや短時間労働では対象外となるケースが多いです。


制度の注意点と誤解されがちな点

制度利用時のリスク管理

1. 雇用形態に注意

試用期間中に雇止めとなった場合、再就職手当は支給されたままとなりますが、企業としての雇用責任を問われる可能性もあります。

2. 求職者との情報共有が重要

求職者が制度を正しく理解していないと、手続き漏れなどのトラブルに発展することがあります。


まとめ:再就職手当を理解して優秀な人材確保につなげよう

再就職手当は、求職者の再スタートを支援し、企業にとっても即戦力となる人材の採用を後押しする制度です。中小企業や個人事業主がこの制度を理解しておくことで、より戦略的な採用活動が可能になります。

積極的に求職者へ制度の存在を伝え、自社の魅力とともにアピールしていきましょう。

早期採用で即戦力を確保するチャンスを逃さないためにも、雇用制度への理解は不可欠です。人材採用や労務管理に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
まずはお気軽に社労士・人事労務の専門家へご相談ください!

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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