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【徳島を拠点に全国対応】企業の経営課題を共に解決すべく専門家(社会保険労務士/中小企業診断士)として活動しています。
2025-10-09

「プランドハプンスタンス」とは?偶然をチャンスに変えるキャリア戦略と企業経営への応用

はじめに:偶然を味方にする経営とキャリア

「人生は計画通りにいかない」とよく言われます。
しかし、その“予期せぬ出来事”をチャンスに変える考え方があることをご存じでしょうか。

それが、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した**「プランドハプンスタンス理論(Planned Happenstance Theory)」**です。
この理論は、キャリア形成だけでなく、企業経営や事業展開にも応用できる「偶然を戦略的に活かす考え方」として注目されています。

プランドハプンスタンス理論とは?

「計画された偶発性」という発想

プランドハプンスタンスとは直訳すると「計画された偶然」を意味します。
人のキャリアは、事前に立てた計画どおりに進むものではなく、偶然の出会いや出来事を活かすことで形づくられていくという考え方です。

クランボルツ教授はこう述べています。

「キャリアは予期せぬ出来事への柔軟な対応と、そこから学び続ける努力によって築かれる」

つまり、偶然の出来事を「予想外のトラブル」ではなく、「新しい可能性」と捉え、積極的に行動する姿勢が重要なのです。

プランドハプンスタンスを構成する5つの力

プランドハプンスタンス理論では、偶然をチャンスに変えるために次の5つの力を高めることが推奨されています。

1. 好奇心(Curiosity)

新しい知識や経験に興味を持ち、未知の分野に踏み出す力。
経営者にとっては、新しい市場や技術、顧客ニーズに敏感であることがこれにあたります。

2. 持続性(Persistence)

失敗に屈せず、諦めずに挑戦を続ける力。
新事業や販路開拓では、成果が出るまで継続する粘り強さが求められます。

3. 楽観性(Optimism)

困難な状況でも「何とかなる」「きっと良い方向に向かう」と信じる心。
前向きな姿勢は、チームを動かし、挑戦を後押しします。

4. 柔軟性(Flexibility)

環境や状況の変化に応じて、考え方や行動を柔軟に変える力。
市場動向や顧客行動の変化に合わせ、経営戦略を見直す柔軟さが求められます。

5. リスク・テイキング(Risk-taking)

結果が不確実でも行動を起こす勇気。
「安全な選択」だけではなく、時にリスクを取ることで大きなチャンスを掴めます。

キャリア理論との比較:キャリアアンカーとの関係

キャリアアンカー理論とは

キャリアアンカー理論は、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン教授が提唱した考え方です。
人は自分の価値観や能力、動機づけをもとに「自分らしいキャリアの軸(アンカー)」を形成し、それに基づいて行動するとされます。

対照的な2つの理論

理論基本姿勢キャリア形成の方法
キャリアアンカー理論自己の価値観や目標を明確にして行動する計画的・内省的
プランドハプンスタンス理論偶然の出来事を柔軟に活かして成長する行動的・適応的

この2つは相反するものではなく、状況に応じて使い分けることが理想です。
たとえば、経営者が長期ビジョン(キャリアアンカー)を持ちながらも、予期せぬ市場変化に柔軟に対応する(プランドハプンスタンス)というのが最も現実的な姿勢です。

経営におけるプランドハプンスタンスの活かし方

1. 変化をチャンスと捉える組織文化をつくる

市場や顧客の変化を「ピンチ」ではなく「進化の機会」と捉える文化を育てることが重要です。
偶然の出来事から学び、行動できる社員を育成することが、企業の持続的成長につながります。

2. 社員に「偶然の出会い」を促す場を設ける

異業種交流会、展示会、社内アイデアコンテストなど、偶然の刺激を得られる場を意図的に作り出すことが有効です。
プランドハプンスタンスは「偶然を起こすための仕掛け」でもあります。

3. 経営計画に「柔軟性」を持たせる

計画を立てること自体は重要ですが、環境変化に対応できるよう、修正や再設定を前提とした柔軟な設計が求められます。
「計画的に偶然を取り込む」ことが、まさにプランドハプンスタンス的な発想です。

4. 採用・育成にも応用する

採用では「完璧な経歴」よりも「好奇心や挑戦心」を持つ人材を評価する。
育成では、失敗から学び、挑戦を続ける文化を醸成する。
これにより、組織全体が変化に強くなります。

実践例:偶然がもたらす成長ストーリー

  • 地方企業が展示会で出会った海外バイヤーとの取引開始
    → 予期せぬ出会いが輸出事業のきっかけとなり、新たな収益源を獲得。
  • 社員の提案から生まれた新商品
    → 小さなアイデアがSNSで話題になり、会社の看板商品に成長。

これらはいずれも偶然の出来事を前向きに活かした「プランドハプンスタンスの成功例」です。

プランドハプンスタンスを習慣化するには?

  1. 小さな挑戦を繰り返す
    → 日常の中で「まずやってみる」習慣をつける。
  2. 失敗を分析し、次に活かす
    → 偶然は失敗の中にも潜んでいる。
  3. 人とのつながりを大切にする
    → 出会いが次のチャンスを生む。
  4. 情報感度を高める
    → 新しい分野やトレンドに常にアンテナを張る。

まとめ:偶然を活かすリーダーシップを

経営もキャリアも、計画だけではうまくいきません。
「偶然」を受け入れ、それを自らの成長や事業拡大に活かす姿勢こそが、変化の時代を生き抜く鍵です。

プランドハプンスタンスの考え方を取り入れれば、
予測不能な未来を恐れるのではなく、**「偶然を計画的に活かす経営」**が可能になります。

【行動の一歩】

自社の「偶然」を振り返ってみましょう。
それは本当に偶然だったのか、それとも行動が引き寄せた必然だったのか?
プランドハプンスタンスの視点で見直すことが、新しいビジネスチャンスの第一歩です。

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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