経営者を悩ませる「組織肥大化」の正体:パーキンソンの法則を徹底解説
はじめに
「忙しいのに、なぜか成果に結びつかない」「組織が大きくなるほど、意思決定が遅くなる」
もしあなたがそう感じているなら、あなたの組織は「パーキンソンの法則」に支配されているかもしれません。
パーキンソンの法則とは、1955年にイギリスの歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した、組織の肥大化と非効率性に関する鋭い洞察です。
多くの経営者は「人が増えれば、一人あたりの負担は減り、生産性は上がるはずだ」と考えます。しかし、現実はその逆のことが起こりやすいのです。本記事では、中小企業経営者や個人事業主が直面する「見えない無駄」を浮き彫りにし、持続可能な成長を実現するためのヒントを提示します。
1. パーキンソンの法則とは何か? 2つの基本原則
パーキンソンの法則は、大きく分けて2つの法則から成り立っています。これらは、官僚組織の無駄が発生する要因を分析した結果導き出されたものです。
1-1. 第1の法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
これは最も有名な法則です。例えば、1時間で終わるはずの資料作成に「今日中(残り3時間)」という期限を与えると、その作業は不思議と3時間かかってしまうという現象です。
人は与えられた時間やリソースを「使い切ろう」とする心理が働きます。これが積み重なることで、組織全体のスピードが著しく低下します。
1-2. 第2の法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
これは経営者や個人事業主にとって最も注意すべき法則です。売上が上がれば上がるほど、それに見合うような「必要経費」や「投資」が増え、結局利益率が変わらない、あるいは悪化するという現象です。
2. 官僚組織の無駄を生む「2つの要因」
パーキンソンは、組織の無駄がなぜ発生するのかをさらに深掘りし、2つの具体的な要因を挙げました。これが、参考資料にもある**「部下増大の法則」と「仕事量増大の法則」**です。
2-1. 部下増大の法則(The Law of Multiplication of Subordinates)
役人は、自分の地位を確立したり、責任を分散したり、あるいは自分自身の仕事の負担感(あるいは「忙しく見せたい」という心理)から、部下を増やすことを望みます。
ここで重要なのは、**「ライバル(同格の人間)ではなく、部下を欲しがる」**という点です。
- 自分が一人で処理しきれないと感じたとき、同格の人間に助けてもらうと自分の地位が脅かされる可能性があります。
- そこで、自分に従順な部下を2人雇うことを選択します。
- 部下が増えることで、自分の権限や「組織内の重要性」が高まったように感じます。
結果として、本来の「行うべき仕事」の量や重要性とは無関係に、役人の数(人員)は自動的に増加していくのです。
2-2. 仕事量増大の法則(The Law of Multiplication of Work)
人員が増加すると、今度は「その人員同士で仕事を作り合う」ようになります。
部下が増えれば、その部下に指示を出し、報告を受け、成果を確認するというプロセスが発生します。さらに、部下同士の調整や会議が必要になります。
- Aさんが書いた書類をBさんがチェックし、Cさんが承認する。
- かつてはAさん一人で判断していたことが、3人の手を経るようになります。
- これによって「仕事をしている実感」は増えますが、生み出されている付加価値は変わりません。
このように、役人たちはお互いに重要度の如何を問わずに仕事を作り出し、忙しさを演出してしまうのです。
3. 中小企業・個人事業主が陥るパーキンソンの法則の罠
この法則は、決して大きな役所や大企業だけの話ではありません。リソースの限られた中小企業や個人事業主こそ、その被害は深刻です。
3-1. 採用が「新たなコストと仕事」を生む
「最近忙しいから、誰か一人事務員を雇おう」
そう考えて採用した結果、その事務員に教える時間、その事務員がミスをしないか管理する時間が発生します。さらに、その事務員の給与を稼ぐために社長がさらに外回りをし、結果として社長の自由時間は以前より減ってしまう。これは中小企業で非常によく見られる光景です。
3-2. ITツールの導入が「仕事」を増やす
生産性を上げるために導入したはずのチャットツールやタスク管理ツールが、いつの間にか「ツールを更新するための仕事」や「過剰な報告・連絡」を生んでいないでしょうか。これも仕事量増大の法則の一種です。
3-3. 会議の肥大化(凡俗法則)
パーキンソンの法則には「凡俗法則(自転車置き場の議論)」という付随する法則があります。
- 高額な投資が必要な工場の建設プランには、誰も意見が出せず数分で承認される。
- 一方で、社員用自転車置き場の屋根の色といった「誰でも口を出せる些末な問題」には、何時間もかけて議論が紛糾する。
中小企業でも、経営の根幹に関わる議論より、目先の事務作業のルール決めなどに時間が浪費されがちです。
4. パーキンソンの法則を打破する具体的な対策
この強力な「法則」に抗い、効率的な組織を作るためには、意識的なシステム構築が必要です。
4-1. 期限を「短く」設定する(締め切りの逆算)
仕事は与えられた時間いっぱいまで膨らみます。であれば、意図的に時間を制限することが有効です。
- 全てのタスクに「標準処理時間」を設定する。
- 会議は「30分単位」ではなく「15分単位」で行う。
- 「いつでもいいよ」という指示をなくし、明確なデッドライン(締め切り)を設ける。
4-2. 「最小限の人員」で回す仕組みを作る
人を増やす前に、まず「その仕事は本当に必要なのか?」「自動化・アウトソーシングできないか?」を徹底的に検討します。
- 部下を増やすことを評価指標にするのではなく、「少ない人数でどれだけの利益を出したか」を評価する文化を作ります。
- 多能工化(一人が複数の業務をこなせるようにする)を進め、部署間の「調整コスト」を削減します。
4-3. 成果主義と「やめる仕事」の選定
「忙しい=偉い」という風潮を排除します。
- 定期的に業務棚卸しを行い、付加価値を生まない「内部調整のための仕事」を強制的に排除します。
- 報告書のための報告書、形骸化した定例会議などは、勇気を持って廃止します。
4-4. 予算管理に「ゼロベース」を取り入れる
第2の法則(支出の膨張)を防ぐため、前年踏襲の予算組みをやめます。
- 「売上が増えたから、なんとなく広告費を増やす」のではなく、その支出が直接的に利益に貢献するかを常に問い直します。
5. まとめ:筋肉質な組織への転換
パーキンソンの法則は、人間の本性に根ざした強力な力です。放っておけば、どんな組織も、どんな家計も、膨張し、非効率になっていきます。
中小企業経営者や個人事業主の皆様に求められるのは、この法則の存在を認め、それに対して**「意識的にブレーキをかけること」**です。
- 時間は「短く」区切る。
- 人は「慎重に」増やす。
- 仕事は「捨てる」ことから始める。
この3点を意識するだけで、貴社の生産性は劇的に向上し、社長自身の自由な時間と、会社としての正当な利益を取り戻すことができるはずです。
組織の成長とは、単に規模を大きくすることではありません。真の成長とは、「より少ないリソースで、より大きな価値を生み出す力をつけること」に他ならないのです。
[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
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