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2026-02-16

ホワイトカラーエグゼンプション解説:経営者が知っておくべきメリットと注意点

日本の働き方が大きな転換期を迎える中、経営者や個人事業主の方々にとって「生産性の向上」と「労働時間の管理」は避けて通れない課題です。その解決策の一つとして注目されているのが**「ホワイトカラーエグゼンプション」**です。

本記事では、この制度の仕組みから、経営上のメリット、導入時に潜むリスク、そして具体的な活用方法までを網羅的に解説します。

1. ホワイトカラーエグゼンプションとは?制度の基本を理解する

まずは、ホワイトカラーエグゼンプションの定義と、なぜこの制度が必要とされているのか、その背景を確認しましょう。

ホワイトカラーエグゼンプションの定義

ホワイトカラーエグゼンプション(White-Collar Exemption)とは、ホワイトカラー(事務職や専門職)の労働者のうち、一定の年収要件を満たし、かつ高度な専門性を持つ職種について、「労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金」に関する規定を適用除外(エグゼンプト)する仕組みです。

平たく言えば、「働いた時間」ではなく「成果」に対して報酬を支払う制度であり、実質的に「残業代が発生しない仕組み」と捉えられることもあります。

なぜ今、この制度が必要なのか

従来の労働基準法は、主に工場などで働く「ブルーカラー」の労働環境を想定して作られてきました。「1時間働けば10個の製品ができる」という世界では、労働時間と成果が比例するため、時間管理が適切でした。

しかし、現代の知的労働(ホワイトカラー)においては、短時間で高い成果を出す人もいれば、長時間かけても成果が出ない人もいます。時間を基準にした評価制度では、**「効率よく短時間で仕事を終える人ほど給与が少なくなる」**という逆転現象が起きてしまい、生産性向上の妨げとなっていました。

裁量労働制との違い

よく混同されるのが「裁量労働制」です。

  • 裁量労働制: 「みなし労働時間」を設定し、実際に何時間働いてもその時間分働いたとみなす制度。
  • ホワイトカラーエグゼンプション: 労働時間という概念そのものを適用除外にする制度。

ホワイトカラーエグゼンプションは、より「成果主義」に近い、自由度の高い働き方を想定しています。

2. 日本版ホワイトカラーエグゼンプション「高度プロフェッショナル制度」

日本では、2019年4月の働き方改革関連法の施行に伴い、「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」として導入されました。

対象となる労働者の条件

この制度は誰にでも適用できるわけではありません。以下の厳しい条件を満たす必要があります。

  1. 年収要件: 年収が1,075万円以上であること。
  2. 職務範囲: 書面で職務内容が明確に定められていること。
  3. 対象職種: 高度な専門知識を必要とする職種(金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発など)。

労使委員会の決議と本人の同意

制度の導入には、事業場に「労使委員会」を設置し、委員の5分の4以上の多数による決議が必要です。さらに、対象となる労働者本人の「同意」が必須であり、同意しなかったことによる不利益な扱いは禁止されています。

3. 経営者・個人事業主にとってのメリット

中小企業の経営者や、事業規模を拡大しようとしている個人事業主にとって、この制度を理解し活用することには大きな意味があります。

1. 生産性の向上とコストの適正化

「ダラダラ残業」を抑制し、短時間で成果を出す文化を醸成できます。残業代を支払うための管理コストが削減され、その分を成果を出した社員へのボーナスとして還元するなど、戦略的な投資が可能になります。

2. 優秀な人材の確保と定着

高度なスキルを持つ人材は、自分のペースで効率的に働くことを好みます。労働時間の縛りをなくすことで、ワークライフバランスを重視するプロフェッショナル層にとって魅力的な職場環境を提供できます。

3. イノベーションの創出

創造的な仕事は、デスクに座っている時間だけに進むものではありません。時間の縛りを解くことで、自由な発想や外部との交流を促し、新しいビジネスアイデアが生まれやすい環境を整えることができます。

4. 懸念されるリスクとデメリット

一方で、この制度には根強い反対意見やリスクも存在します。経営者は「光」の部分だけでなく「影」の部分も正しく認識しなければなりません。

長時間労働(過労死)の助長

最も懸念されているのが、**「残業代が出ないことをいいことに、無限に働かせてしまうのではないか」**という点です。いわゆる「残業代ゼロ法案」という批判はこの点に集中しています。

健康管理の難しさ

労働時間の規制が外れるため、社員が自律的に休まない限り、過重労働に陥るリスクがあります。会社側には、客観的な方法による健康管理(健康確保措置)が法律で義務付けられています。

評価基準の不透明さ

「成果」をどう定義するかは非常に困難です。明確な評価指標(KPI)がないまま導入すると、不公平感が生まれ、かえってモチベーションを低下させる原因になります。

5. 中小企業が導入を検討する際のステップ

もし、あなたの会社に年収要件を満たす高度な専門職がいる場合、以下のステップで検討を進めてください。

ステップ1:職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の整備

「何をすれば成果なのか」を明確に言語化します。あやふやな職務内容では、この制度は機能しません。

ステップ2:社内ルールの策定と合意形成

労使委員会での議論を尽くし、対象者の健康を守るための「休息時間(勤務間インターバル)」などの措置を詳細に決めます。

ステップ3:健康確保措置の徹底

労働時間の規制は適用されませんが、「健康管理時間の把握」は義務です。PCのログイン履歴や入退室記録など、客観的なデータを残す仕組みを構築しましょう。

6. まとめ:成果で勝負する時代の新しいマネジメント

ホワイトカラーエグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)は、単なる「残業代削減」の道具ではありません。それは、労働者がプロフェッショナルとして自律し、企業がその成果に対して正当に報いるための「信頼の契約」です。

中小企業や個人事業主がグローバルな競争に勝ち抜くためには、旧来の「時間貸し」の働き方から脱却する必要があります。この制度を正しく理解し、適切に運用することは、組織の筋肉質化に向けた大きな一歩となるでしょう。

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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