【生産性向上】モーション・スタディ(動作研究)とは?
はじめに
深刻な人手不足や働き方改革の推進など、中小企業や個人事業主を取り巻く経営環境は日々厳しさを増しています。限られた人員と時間の中で利益を最大化するためには、日々の業務に潜む「ムダ」を徹底的に排除し、生産性を向上させることが不可欠です。
そこで昨今、改めて注目を集めているのが**「モーション・スタディ(動作研究)」**という手法です。
本記事では、アメリカの研究者であるF.B.ギルブレスが発展させたこのモーション・スタディの基礎知識から、具体的な分析手法、そして中小企業の現場で実際に導入して業務効率化を図るためのステップまでを分かりやすく解説します。現場の作業を見直し、企業の価値をさらに高めるためのヒントとして、ぜひお役立てください。
1. モーション・スタディ(動作研究)とは?
モーション・スタディ(motion study)とは、作業者が行う「動作」そのものに焦点を当て、最も効率的で疲労の少ない作業方法を見つけ出すための分析手法です。特に製造業などの生産管理の領域で、業務や作業の標準化、標準時間の算出、そして現場の改善を図るために広く用いられてきました。
1-1. アメリカのF.B.ギルブレスが発展させた研究
モーション・スタディは、20世紀初頭にアメリカのフランク・バンカー・ギルブレス(F.B. Gilbreth)とその妻であるリリアン・ギルブレスによって体系化・発展させられました。そのため、別名**「ギルブレスの動作研究」**とも呼ばれています。
ギルブレスは、レンガ積みの職人が人によって全く異なる動きをしていること、そして無駄な動きが多いことに気づきました。そこで、様々な測定装置や当時の最新技術であったフィルム(動画撮影)を使って職人の動きを詳細に分析・記録しました。その結果、レンガ積みの動作を大幅に削減し、作業効率を劇的に向上させることに成功したのです。
1-2. 目的は「ムリ・ムダ・ムラ」の排除
モーション・スタディの最大の目的は、日々の作業の中に含まれる動作の**「ムリ・ムダ・ムラ」を排除し、仕事の価値を高め、効率的に作業を行う方法を見つけ出すこと**です。
- ムリ(無理): 作業者の能力や体力を超えた過度な負担がかかっている状態。(例:重すぎる荷物を一人で運ぶ、不自然な姿勢で作業を続けるなど)
- ムダ(無駄): 付加価値を生まない不要な動作。(例:工具を探し回る、部品を取りに何度も往復するなど)
- ムラ(斑): 作業者によって、あるいは時間帯によって作業のスピードや質にばらつきがある状態。
これらを動作レベルで見直し、誰もが安全かつスピーディーに遂行できる「最適解」を導き出すのが、モーション・スタディの役割です。
2. ギルブレスが定義した「18の動作要素(サーブリッグ)」
ギルブレスの最大の功績は、人間のあらゆる手作業を細かい要素に分解したことです。彼は、どんなに複雑に見える作業であっても、最終的には18の基本動作要素に細分化できると提唱しました。
この基本動作要素は、彼の名前(Gilbreth)のスペルを逆から読んだ**「サーブリッグ(Therblig)」**と呼ばれています。
2-1. 動作を細分化するアプローチ
作業を「組み立てる」といった大まかな単位で捉えるのではなく、「手を伸ばす」「つかむ」「運ぶ」といった微小な単位(サーブリッグ)にまで分解して記録します。これにより、どの瞬間に無駄が発生しているのか、どの動作が疲労の原因になっているのかを客観的なデータとして把握できるようになります。
2-2. 18の動作要素の具体例
ギルブレスが定義した18の要素は、大きく「有効な動作(作業を進めるもの)」と「無効な動作(改善・排除すべきもの)」に分けられます。代表的なものは以下の通りです。
作業に必要な動作(第1類)
- 手を伸ばす (Transport Empty): 対象物に向かって手を移動させる動作。
- つかむ (Grasp): 対象物を手や指で保持する動作。
- 運ぶ (Transport Loaded): 対象物を持ったまま移動させる動作。
- 組み立てる (Assemble): 複数の部品を結合させる動作。
- 使う (Use): 道具や機械を本来の目的で使用する動作。
- 放す (Release Load): つかんでいたものを手放す動作。
作業を遅らせる動作(第2類・第3類:改善の対象)
- 探す (Search): 目や手を使って対象物の位置を見つけようとする動作。
- 見つける (Find): 探した結果、対象物を発見した瞬間の精神的反応。
- 選ぶ (Select): 複数のものの中から、必要なものを一つ選び出す動作。
- 位置を決める (Position): 対象物を正確な場所に合わせる動作。
- 考える (Plan): 次の作業をどう進めるか迷ったり、思考したりする時間。
- 避けられない遅れ (Unavoidable Delay): 機械の待ち時間など、作業者の意志ではどうにもならない停止。
中小企業の現場改善では、特に「探す」「選ぶ」「考える」といった付加価値を生まない時間をいかに減らすかが、生産性向上のカギとなります。
3. なぜ今、中小企業・個人事業主にモーション・スタディが必要なのか?
大企業だけでなく、リソースの限られた中小企業や個人事業主こそ、モーション・スタディの考え方を取り入れるメリットは絶大です。
3-1. 深刻化する人手不足への対応
少子高齢化に伴い、新たな人材を採用することは年々難しくなっています。限られた人数でこれまで以上、あるいは同等の成果を上げるためには、従業員一人当たりの労働生産性を高めるしかありません。動作のムダを省くことで、同じ時間内でより多くの業務をこなせるようになります。
3-2. 業務の標準化と属人化の解消
「ベテランのAさんしかできない作業がある」「人によって作業スピードが全く違う」といった「属人化」や「ムラ」は、中小企業によくある課題です。モーション・スタディによって優秀な作業者の動きを分析し、それをマニュアル化(標準化)することで、新人や経験の浅いスタッフでも短期間で高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
3-3. 労働環境の改善と従業員満足度の向上
モーション・スタディは、単にスピードを上げるためだけのものではありません。不自然な姿勢や無駄な歩行といった「ムリ」を排除することは、従業員の肉体的・精神的な疲労を軽減し、労働災害を防ぐことにも直結します。働きやすい環境を整備することは、従業員満足度の向上や離職率の低下にもつながります。
4. モーション・スタディの具体的な実践ステップ
では、実際に自社の現場にモーション・スタディを導入し、改善を図るための具体的な手順を解説します。現代ではスマートフォンやタブレットのカメラを活用することで、手軽に実践可能です。
4-1. ステップ1:現状の作業の録画・記録
まずは改善したい作業を選定し、実際の作業風景をスマートフォンなどで録画します。ギルブレスの時代は高価なフィルムが必要でしたが、今は誰でも簡単に高画質な動画を撮影できます。この際、手元の細かい動きだけでなく、作業者の動線(歩き回り)も確認できるアングルで撮影すると効果的です。
4-2. ステップ2:動作の細分化と分析
撮影した動画を再生しながら、作業を前述の「サーブリッグ(動作要素)」に細分化して記録していきます。
「ここで部品を探している(Search)」「ここで道具を持ち替えている(Position)」など、動画を一時停止しながら一つひとつの動きを洗い出します。
4-3. ステップ3:ムリ・ムダ・ムラの洗い出し
細分化した動作の中から、付加価値を生んでいない「ムダ」な動作を見つけ出します。
- 工具を探す時間が長い場合は、「定位置管理(5S)」ができていない証拠です。
- 材料を取りに行く歩行距離が長い場合は、レイアウトに問題があるかもしれません。
- 片手だけが忙しく動いており、もう一方の手が遊んでいる(保持しているだけ)状態も改善の余地があります。
4-4. ステップ4:改善案の策定と標準化
洗い出した問題点に対して、改善案を考えます。
- 「探す」を無くすために、工具を吊り下げ式にする。
- 「運ぶ」を減らすために、作業台の横に部品棚を移動させる。
- 両手を同時に使えるような治具(補助器具)を導入する。
改善案を取り入れた新しい作業手順を試し、問題がなければそれを「標準作業」としてマニュアル化します。
4-5. ステップ5:標準時間の算出と定着化
最適化された新しい標準作業をベースに、その作業を完了するのに必要な「標準時間」を算出します。この標準時間が、今後の生産計画や人員配置の基礎データとなります。あとは、全従業員が新しい手順を守れるように教育し、現場に定着させていきます。
5. モーション・スタディを導入する際の注意点
効果的な手法ですが、進め方を間違えると現場の反発を招く恐れがあります。以下の点に注意して導入を進めましょう。
5-1. 従業員への目的の共有
「監視されている」「単に急かされるだけだ」と従業員に誤解されないよう注意が必要です。導入前には必ず、「疲労を軽減するため」「安全に作業できるようにするため」「会社の利益を上げて還元するため」といった、従業員自身にもメリットがある前向きな目的であることを丁寧に説明し、理解を得ることが不可欠です。
5-2. 継続的な改善(PDCA)の重要性
一度改善して標準化したら終わりではありません。現場の状況や扱う製品、人員構成は常に変化します。定期的に作業を見直し、「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)」のPDCAサイクルを回し続けることが、生産性を高く維持する秘訣です。
6. まとめ:動作のムダを省き、企業価値を高めよう
アメリカのF.B.ギルブレスが発展させた「モーション・スタディ(動作研究)」は、作業の中にある「ムリ・ムダ・ムラ」を18の要素から徹底的に見直し、生産性を飛躍的に高める強力な手法です。
「探す」「選ぶ」といった日々の小さなムダの蓄積は、長い目で見ると企業の経営を圧迫する大きな損失となります。スマートフォン一つで動画分析ができる現代において、モーション・スタディは中小企業や個人事業主にとって、低コストですぐに始められる有効な業務改善策です。ぜひ本記事を参考に、自社の現場に潜む「動作のムダ」を見つけ出し、より効率的で働きやすい職場づくりに挑戦してみてください。
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[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]
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