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2025-07-14

時間外手当の基礎知識計算方法

はじめに:見落としがちな「時間外手当」がトラブルの火種に?

中小企業の経営者や個人事業主にとって、「人件費の管理」は非常に重要な課題です。その中でも特に注意すべきなのが「時間外手当(残業代)」です。正しく支給しなければ、未払い残業代請求や労働基準監督署からの指導など、思わぬトラブルに発展することもあります。

この記事では、時間外手当の基本的な仕組みから、割増賃金の正しい計算方法、就業規則における注意点、そしてトラブル回避のための実務対応まで、網羅的に解説します。


時間外手当とは?|基本概念をおさらい

時間外手当の定義

時間外手当とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働者が働いた際に支払うべき割増賃金のことです。労働基準法第37条に基づき、企業には「所定の割増率」で残業代を支払う義務があります。

対象となる労働者

原則として、パート・アルバイトを含むすべての労働者が対象です。ただし、管理監督者や裁量労働制の適用者など、一部の例外もあります(後述)。


割増賃金のルールと計算方法

割増率の基本ルール

労働時間割増率説明
1日8時間・週40時間超25%以上時間外労働(通常残業)
深夜労働(22時~翌5時)25%加算深夜割増
法定休日労働35%以上休日出勤の割増
法定休日+深夜労働60%以上複数条件該当時

※実務では「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いを理解しておくことが重要です。

割増賃金の計算式

割増賃金 = 基本給(月給)÷ 月の所定労働時間 × 割増率 × 残業時間

例)月給30万円、所定労働時間160時間、残業10時間の場合

30万円 ÷ 160時間 × 1.25 × 10時間 = 約23,438円(残業代)


就業規則と労働契約書に明記すべきポイント

未払い残業代防止のカギは「書面による明記」

時間外手当の支給ルールは、就業規則や労働契約書に明記する必要があります。明文化されていない場合、後に「残業代未払い」と主張される可能性が高まります。

記載すべき項目

  • 所定労働時間と休憩時間
  • 残業・休日労働の有無と指示方法
  • 割増賃金の支給基準と計算方法
  • 固定残業代(みなし残業代)制度の有無とその内訳

固定残業代制度を導入する際の注意点

誤った運用は違法になるリスクも

固定残業代(みなし残業代)制度は、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含めて支払う方法ですが、以下の3要件を満たしていなければ無効とされる可能性があります。

3つの要件

  1. 固定残業代の金額・時間数が明確に記載されている
  2. 超過分の残業代を追加支給している
  3. 固定残業代が基本給と明確に区分されている

時間外手当をめぐるよくあるトラブルと対策

ケース1|「管理職に残業代は不要」と思い込んでいた

対策: 労働基準法でいう「管理監督者」に該当しなければ、管理職でも時間外手当の支給は必要です。役職名ではなく実態に基づく判断が求められます。

ケース2|「業務命令なし」の自主残業でも請求された

対策: 黙認されている残業は、実質的に使用者が許可したと見なされることがあります。業務時間外の作業については、事前承認制を明確にルール化しましょう。


管理監督者や裁量労働制における例外

管理監督者とは?

経営者と一体的な立場にある者で、出退勤の自由や報酬面で裁量が認められる場合に限られます。課長クラスではなく、実際に経営判断に関与する部長級以上が一般的。

裁量労働制の対象者

専門業務型や企画業務型など、労使協定・労使委員会の決議等が必要。導入には厳格なルールがあります。


時間外手当の支払い義務違反が招くリスク

民事上のリスク

  • 未払い残業代の請求(2年遡及/悪質な場合3年)
  • 付加金(同額を上乗せして支払う義務)
  • 遅延損害金(年14.6%)の請求

行政上のリスク

  • 労働基準監督署から是正勧告・指導
  • 悪質なケースでは企業名の公表や送検

時間外手当の実務管理を効率化する方法

システム導入とルール整備でミスを防ぐ

  • 勤怠管理システムの導入(ICカード、クラウド型)
  • 残業申請・承認のワークフロー整備
  • 人事・労務担当者の定期研修

まとめ:時間外手当の正しい理解が経営を守る

時間外手当は、法律に基づく義務であると同時に、労働者との信頼関係を築くための重要な報酬制度です。中小企業においては特に「知らなかった」「ついうっかり」が大きなリスクとなりえます。正しい制度設計と運用によって、トラブルを未然に防ぎ、健全な労務管理を目指しましょう。


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労働時間管理や就業規則の見直しに不安がある場合は、専門家に相談するのが最も確実です。当記事を参考に、まずは自社のルールや実態を見直してみてください。

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[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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