toggle
【徳島を拠点に全国対応】企業の経営課題を共に解決すべく専門家(社会保険労務士/中小企業診断士)として活動しています。
2025-07-25

COOとは何か?“執行のプロ”の役割と活用法

はじめに

経営戦略の策定だけでなく、日々の事業運営においても的確な判断が求められる現代の経営環境。その中で、CEO(最高経営責任者)と並び注目される存在が「COO(最高執行責任者)」です。特に成長志向の中小企業においては、業務執行に特化したCOOの役割を明確にすることで、経営の質を大きく向上させることが可能です。本記事では、COOの基本から日本企業における位置づけ、中小企業がCOOを導入・活用する際のポイントまで、わかりやすく解説します。

COOとは?

COOの定義と役割

COO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)は、企業の業務全体の運営・執行を統括する役職です。CEOが企業全体の方向性を決める「戦略家」であるならば、COOはその戦略を実行に移す「現場の司令塔」といえるでしょう。

アメリカ型経営におけるCOOの位置づけ

米国企業においては、取締役会(Board of Directors)で戦略を決定し、オフィサー(執行役)がその戦略を遂行します。COOはその中で、製造・営業・サービスなどのライン部門を統括し、日常的な業務遂行の責任を負います。

  • CEO:企業の方向性と戦略策定
  • COO:戦略の実行と事業運営の責任

日本企業におけるCOOの導入背景

伝統的な社長制度との違い

日本企業では、伝統的に「社長」が業務執行を担ってきました。会長は名誉職的な位置づけであることが多く、社長が事業全般に責任を負っていました。したがって、日本の社長はCOOに加え、CFOやCTOのような役割を包括的に担うケースも見られます。

委員会設置会社制度とCOO導入

2003年、会社法に基づき「委員会等設置会社制度」が導入され、アメリカ型のガバナンスを導入する企業が増加しました。これにより、経営戦略を担うCEOと、業務執行を担うCOOを分ける動きが広がったものの、両者の責任分担が不明確なまま運用されている企業も存在します。

COOの主な業務領域

ライン部門の統括

COOは、営業・生産・物流・サービスなど、事業運営の現場部門を束ね、円滑な事業推進を行います。

戦略実行と目標達成の責任

CEOや取締役会が立てた戦略を、実行可能な業務計画に落とし込み、成果を出す責任があります。

部門間の調整とマネジメント

各部門の利害調整や業務プロセスの改善を行い、経営資源を最適に配分します。

人材マネジメント

部門責任者との連携を通じ、現場リーダーの育成・評価・配置もCOOの重要な役割です。

中小企業におけるCOOの活用法

代表者の業務分担による負担軽減

中小企業では、社長自らが全業務を担うことが多く、戦略立案に集中できないケースが見られます。COOを配置することで、日常のオペレーションを委任でき、社長はより経営に専念できる体制を築けます。

ベンチャー企業におけるスケーラブルな組織構築

事業拡大フェーズでは、スピード感を持って業務を回せるCOOの存在が欠かせません。人員や拠点が増える中で、COOが指揮を執ることで業務の質と統一性を維持できます。

外部人材によるノウハウ導入

中小企業でCOOを内部昇格させるだけでなく、外部の経験豊富な人材を起用することで、業務改善やプロセス標準化に大きな成果が期待できます。

COOと他のCxOとの違い

役職名称主な役割
CEO最高経営責任者経営戦略の策定と企業全体の監督
COO最高執行責任者業務の運営管理・戦略の実行
CFO最高財務責任者財務戦略・資金調達・会計監査など
CTO最高技術責任者技術戦略・製品開発の監督
CMO最高マーケティング責任者マーケティング戦略の策定と実行

COO制度を導入する際の注意点

CEOとの役割分担を明確に

両者の責任領域があいまいなままでは、組織の混乱を招きかねません。職務分掌を明記し、社内に共有することが重要です。

経営判断を任せる覚悟

COOを形式的な存在にとどめるのではなく、実際に意思決定を任せる体制を整えることが、真の効果を生みます。

社内文化との整合性

トップダウン型の文化が根強い企業では、COOの役割が浸透しにくい場合もあります。段階的な制度設計が必要です。

まとめ:中小企業経営におけるCOOの可能性とは?

COOは単なる補佐役ではなく、戦略を実行に移す“責任者”として経営の柱となる存在です。日本企業ではまだ制度として完全に浸透しているとはいえませんが、変化の激しい経営環境の中では、その必要性は今後ますます高まっていくでしょう。中小企業においてもCOO的な役割を明確にすることで、経営の効率化、成長の加速が期待できます。

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

人事評価・賃金改定のことなら「社会保険労務士法人あい」へ

お問い合わせフォーム

関連記事