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2025-08-19

資産の価値を賢く計算!「定率法」徹底解説

はじめに:経営者なら知っておきたい「減価償却」と「定率法」の基礎

事業用資産を購入すると、その価値は年々減少していきます。これを会計上で正しく処理するために用いられるのが「減価償却」です。その減価償却方法のひとつである「定率法(fixed rate method)」は、中小企業や個人事業主の資金繰りや節税対策において非常に有効な手段です。

この記事では、定率法の基本から具体的な計算方法、導入時の注意点、他の減価償却法との違いまで、実務で役立つ情報をわかりやすく解説します。

定率法とは?基本の仕組みを理解しよう

定率法の定義

定率法とは、毎年一定の「償却率」を用いて、残存簿価(未償却残高)から減価償却費を算出する方法です。言い換えると、資産の価値が毎年一定の割合で減少するという考え方に基づいています。

定率法の特徴

  • 初期費用が大きい:使用初年度に多くの減価償却費を計上する
  • 逓減する償却費:年を追うごとに減価償却費は減少
  • 節税効果あり:初期の税負担を軽減できる
  • 資金繰りに好影響:キャッシュフローの改善に役立つ

定率法の計算方法

基本の計算式

減価償却費 = 未償却残高 × 償却率

たとえば、取得価額が100万円の設備で、耐用年数が5年、償却率が0.369の場合、初年度の償却費は以下のようになります。

1年目:1,000,000 × 0.369 = 369,000円
2年目:(1,000,000 - 369,000)× 0.369 = 約230,799円
...

年々の償却額が減っていくため、償却スピードは早いものの、後年になるほど費用計上額が減少していきます。

定率法で使用する「償却率」とは?

償却率は、資産の耐用年数に応じて国税庁が定めている率を使用します。固定資産の種類によって異なるため、国税庁の耐用年数表を確認することが必要です。

定額法との違いとは?

定額法とは?

定額法は、毎年同じ金額を費用として計上する方法です。たとえば、100万円の資産を5年で償却する場合、毎年20万円ずつ費用を計上します。

定率法と定額法の比較

項目定率法定額法
減価償却費初期に多く、後年に少ない毎年一定
節税効果初期に大きい平準化される
資金繰り改善しやすい安定的
適した資産使用価値が年々減る資産(例:機械)使用価値が一定の資産(例:建物)

定率法が適している資産とは?

定率法が向いているケース

  • 機械設備:使用開始時の効率が高く、年々性能が落ちる
  • 車両:年数が経過するごとに故障リスクが上がる
  • 電子機器:技術の進化により陳腐化が早い

定率法が適さないケース

  • 建物のように使用価値が年数によって大きく変わらない資産
  • 長期にわたり安定して使用される資産

定率法のメリット・デメリット

メリット

  • 早期の節税が可能:創業期や投資初期の税負担を軽減
  • 資金繰りが楽になる:初期の減価償却費を多く計上できるため、納税額が抑えられ、キャッシュを確保しやすい
  • 実際の資産価値の減少と一致しやすい

デメリット

  • 後年の減価償却費が少なくなる:将来的な税負担が重くなる可能性
  • 会計上の利益が変動しやすい:利益の見通しが立てづらい場合がある
  • 中途売却時の帳簿残高が高めに残る

定率法の会計・税務上の注意点

税法上の適用制限

平成28年度の税制改正により、「一部の資産については定率法が適用できなくなった」ことに注意が必要です。たとえば、建物附属設備や構築物については、原則として定額法が適用されます。

届出の必要性

法人が法定の償却方法以外を選択する場合には、**「減価償却資産の償却方法の届出書」**を税務署に提出する必要があります。

中小企業における定率法活用のポイント

創業初期や設備投資直後に有効

開業後間もない企業は売上が安定しないため、早期に減価償却を進めて節税することで資金繰りを改善できます。

キャッシュフロー重視の経営判断に適応

節税効果によって納税資金を抑えられることで、新たな投資や運転資金への充当がしやすくなるというメリットがあります。

導入を検討する際のステップ

  1. 対象資産の特定
  2. 耐用年数と償却率の確認
  3. 減価償却シミュレーションの実施
  4. 税理士・会計士との相談
  5. 必要に応じて届出書を提出

よくある質問(FAQ)

定率法と定額法、どちらを選ぶべきですか?

資産の性質や事業フェーズによって異なります。初期投資が大きい場合や節税を優先する場合は定率法、安定した費用配分を重視する場合は定額法が向いています。

中途売却や廃棄の場合の処理は?

帳簿残高が高く残っている可能性があるため、売却損や除却損が発生しやすい点に注意が必要です。

ソフトウェアや無形固定資産にも使えますか?

一部の無形固定資産では使用できない場合もあります。資産の種類と適用可能な償却方法を必ず確認しましょう。

まとめ:定率法は経営判断の一手に

定率法は、資産の価値が逓減する現実に即した減価償却方法であり、特に創業初期の資金繰りや節税対策に効果的です。一方で、後年の費用計上が減ることによる利益変動リスクもあるため、導入には慎重な判断が求められます。

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