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2024-04-16

「基準内賃金」と「基準外賃金」

はじめに

中小企業の経営者や個人事業主の皆様にとって、毎月の給与計算は避けて通れない重要な業務です。「基本給以外にどんな手当をつけるべきか」「残業代の計算根拠はどう決めるべきか」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

賃金の構成要素を正しく理解する上で欠かせないのが、**「基準内賃金」「基準外賃金」**の区別です。これらの用語は、単に帳簿上の分類にとどまらず、賞与(ボーナス)の査定、昇給の基準、さらには労働基準法に基づく割増賃金の計算において極めて重要な役割を果たします。

本記事では、基準内賃金と基準外賃金の定義から、具体的な計算方法、そして中小企業が取り組むべき労務管理のベストプラクティスまで、専門的な視点から分かりやすく解説します。

1. 基準内賃金とは何か?その定義と性質

まず理解しておきたいのは、「基準内賃金」という言葉の立ち位置です。実は、この言葉には意外な特徴があります。

1-1. 法令上の定義がない「社内ルール」の賃金

驚かれるかもしれませんが、「基準内賃金」という名称は労働基準法などの法令で直接定義されているわけではありません。 その定義や内容は、それぞれの会社が就業規則や賃金規程で定めるところによります。

一般的には、月々支払われる賃金のうち、所定外給与(残業代など)や実費弁済的なもの(通勤手当など)を除いた、**「その人の職務能力や役割に対して支払われる基本的な部分」**を指します。

1-2. 基準内賃金に含まれる主な項目

多くの企業で基準内賃金として扱われる項目には、以下のようなものがあります。

  • 基本給: 給与の核となる部分
  • 役職手当: 責任の重さに応じて支払われる手当
  • 資格手当: 特定のスキルに対して支払われる手当
  • 固定残業代(みなし残業代): 基準内賃金に含めて運用する場合もありますが、計算上は区別が必要です

基準内賃金は、労働契約に基づいて定められた「通常の労働時間」に対する対価であり、労働者の基本的な生活を支えるための根幹となる賃金といえます。

2. 基準外賃金とは何か?

基準内賃金以外のものは、すべて**「基準外賃金」**に分類されます。これは、通常の労働時間や形態を超えた労働に対して支払われる賃金、あるいは労働そのものへの対価というよりは「費用の補填」としての性質が強い賃金です。

2-1. 基準外賃金に該当する代表的な項目

具体的には、以下の項目が基準外賃金に該当します。

  • 時間外勤務手当(残業代): 法定労働時間を超えた労働への対価
  • 休日勤務手当: 法定休日に労働させた場合の対価
  • 深夜勤務手当: 22時から翌5時までの労働に対する加算
  • 通勤手当: 通勤にかかる実費を補填するもの
  • 臨時的な賃金: 結婚祝金や見舞金など

これらは、その月の労働状況や個人の状況(住んでいる場所など)によって変動するため、基本的な賃金とは切り離して管理されます。

3. なぜ「基準内」と「基準外」を分ける必要があるのか?

なぜ多くの企業が、わざわざ賃金を「基準内」と「基準外」に区分して管理しているのでしょうか。それには明確な理由が3つあります。

3-1. 賞与や昇給等の算定基礎額にするため

これが実務上、最も大きな理由です。

もし、通勤手当も含めた「所定内給与」を賞与の算定基礎にしてしまうと、遠くから通勤していて通勤手当が高い従業員の方が、職務内容が同じ近隣住まいの従業員よりも賞与額が多くなってしまうという矛盾が生じます。

職務内容や勤務成績とは関係がない費用(通勤費など)によって賞与額が増減するのを防ぐため、賃金の基本的な部分に対象を絞り込んだ「基準内賃金」を計算の土台にする必要があるのです。

3-2. 世間水準との賃金比較を行うため

他社と自社の給与水準を比較する際、残業代や通勤手当を含めた総額で比較すると、正しい判断ができません。「わが社の基本給(基準内賃金)は業界平均と比較して妥当か?」を判断するために、変動要素を除いた数値が必要になります。

3-3. 割増賃金(残業代)の除外項目を明確にするため

労働基準法では、残業代(割増賃金)を計算する際の基礎から除外できる手当が定められています。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

企業によっては、これら除外できる手当をすべて「基準外賃金」と定義し、**「基準内賃金 = 残業代の算定基礎額」**として一致させて管理を簡略化している場合もあります。

4. 基準内賃金・基準外賃金の具体的な計算方法

ここでは、具体的な計算例を用いて、どのように金額が算出されるかを見ていきましょう。

4-1. 月給制の場合の算出例

ある従業員の給与体系が以下のようになっていると仮定します。

項目金額分類(一般的な例)
基本給200,000円基準内賃金
役職手当30,000円基準内賃金
住宅手当20,000円会社により異なる(※1)
通勤手当15,000円基準外賃金
合計265,000円

(※1)住宅手当を「基準内賃金」に含める会社もあれば、残業代計算の基礎から外すために「基準外賃金」とする会社もあります。

この場合、この会社の基準内賃金が「基本給+役職手当」であれば、230,000円が基準内賃金となります。賞与が「基準内賃金の3ヶ月分」であれば、230,000円 × 3 = 690,000円となります。

4-2. 割増賃金(基準外賃金)の計算方法

残業代などの基準外賃金は、以下の式で計算します。

1時間当たりの賃金 × 残業時間 × 割増率(1.25〜)

この「1時間当たりの賃金」を算出する際、基準内賃金がベースとなります。

例えば、月平均所定労働時間が160時間で、基準内賃金が230,000円の場合、

230,000円 ÷ 160時間 = 1,437.5円(1円未満四捨五入して1,438円)

となり、これに1.25を乗じたものが残業単価になります。

5. 中小企業における賃金管理のベストプラクティス

賃金の透明性と正確性は、従業員の満足度を高めるだけでなく、コンプライアンス(法令遵守)を守る上でも極めて重要です。以下のポイントを意識して管理体制を整えましょう。

5-1. 賃金規程の明確化と周知

「何が基準内賃金で、何が基準外賃金か」を就業規則(賃金規程)に明確に記載しましょう。

特に、残業代の計算の基礎にどの手当を含め、どの手当を除外するのかを明文化しておくことで、将来的な労務トラブルを未然に防ぐことができます。

5-2. 賃金明細書の詳細な発行

従業員に対して、毎月の給与明細で内訳を正確に伝えましょう。

「どの項目が固定的に支払われる基準内賃金なのか」「どの項目が変動的な基準外賃金なのか」が区別されていると、労働者からの信頼感が高まります。

5-3. 勤怠管理システムの導入による自動化

手書きのタイムカードやエクセルでの計算は、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすくなります。

最新の勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入することで、労働時間の記録を自動化し、基準内賃金に基づいた残業代計算を正確に行うことが可能です。これは事務負担の軽減にも直結します。

5-4. 最新の労働法規への対応

労働基準法は頻繁に改正されます(例:中小企業における月60時間超の残業代割増率引き上げなど)。常に最新の情報をキャッチし、自社の賃金システムが法令に抵触していないか、定期的にチェックする体制を構築しましょう。

6. まとめ

基準内賃金と基準外賃金の適切な管理は、単なる事務作業ではありません。それは、企業が法的義務を果たすための基盤であり、従業員の貢献に対して公平に報いるための「物差し」でもあります。

  • 基準内賃金: 会社のルールで決まる基本部分。賞与や昇給、比較の基準になる。
  • 基準外賃金: 残業代や通勤手当など、変動的・付随的な部分。

これらを透明性高く、正確に管理することで、従業員との良好な信頼関係を築き、最終的には企業全体の業績向上へと繋げることができるでしょう。

もし、「自社の賃金規程が現状の法律に合っているか不安だ」「手当の分類をどう見直すべきかアドバイスがほしい」といったお悩みがありましたら、専門家への相談も一つの有効な手段です。

次の一歩として、まずは貴社の就業規則に記載された「賃金の定義」を一度読み直してみることから始めてみませんか?

[監修:社会保険労務士・中小企業診断士、島田圭輔]

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